273. パニック症と飛行機恐怖2
診察で、パニック症の患者さんから、「飛行機で旅行に行きたいけど、パニック発作が出るのではないかと心配している。どうすればいいか?」というご相談をよくいただきます。それに対し私は、「どうしても行きたいのであれば、ビクビクハラハラでも行ってみたらいかがでしょうか。飛行機の中で発作が出たら確かに怖いかもしれませんが、数十分で必ず治まります。どうしても心配であれば、飛行機に乗る前に飲める頓服薬を出します。とにかく目的地に着ければOKです。なお、飛行機に乗るための練習は一切必要ありません」とお伝えしています(注)(170話参照)。これは非常に冷たい対応に思えるかもしれませんが、この助言は、「不安は操作せず必要なことをやっていく」「練習よりも実践を重んじる」という森田療法の考え方に基づくものです。実際にそののち、患者さんが飛行機に無事乗れて、旅行を楽しめたというお話をよく伺っております。
(注)この助言は、ある程度回復されたパニック症の患者さんに対して良くお伝えしております。一方、パニック症の患者さんの中には、抑うつ症状を伴うケースもあります。この場合、無理に行動を促すことは適切ではありません。よって、抑うつ症状が十分に改善してしていない患者さんに対しては「今は無理をせず、お元気になられてから行動してみてはいかがでしょうか」という対応になると思います。
また、時折患者さんから、「飛行機の中でパニック発作を起こした場合、周りに迷惑をかけるのではないか」と心配されるお話も伺います。確かに、機内でパニック発作が生じてしまった場合、症状のことを把握していない周囲の人が慌ててしまい、CAさんが「お医者さんいませんかぁ~!?」と騒ぎだしてしまうのではないかと懸念されるのも無理はないと思います。そのお話に対し、私は「症状の内容が書かれたカード」を予め準備することをお勧めすることがあります。
これは、
・万一発作が生じても数十分で必ず治まること。
・その間安静にすればよく、特別な処置は必要としないこと。
・ましてや、医師や救急車などを呼ぶ必要はないこと。
・できれば「大丈夫ですよ」などと安心する声掛けをしてもらえばありがたいこと。
を予めカードに書いておき、万一発作が生じた場合にCAさんや周囲の方に見せるものです。発作の最中ではなかなか自分の症状を説明することが難しいでしょう。そういう場合に備え、事前にカードを作成し、飛行機に乗る際に携行することで、いざというときに役に立つことが期待できます。
カードの文例をお示しいたします。
私はパニック症で通院しています。この発作は、安静にしていれば数十分で必ず治まります。そのまま休ませてください。医師や救急車は呼ぶ必要はありません。 その間、「大丈夫ですよ」などと声掛けをしていただければ助かります。 |
これはご自身の状態に応じて適宜アレンジしてください。なお、検索サイトで「パニック症 カード」で検索すると、様々な文例を見ることができますので参考にされるとよいでしょう。