295. 開業直後に生じた停電トラブル
今日から12月。朝はだいぶ冷え込むようになりました。最近では私が7時ごろ当院に出勤すると、すぐさま院内のエアコンの暖房を入れるようにしています。そのようにすることで、診療前のミーティングの時刻にはある程度室内は暖まるようになります。
今は問題なくエアコンが使用できますが、開業直後の5年前、頻回にブレーカーが落ちるトラブルが発生し、困ったことがありました。
開業直後の寒い朝(2018年12月上旬)、診療スペース(待合室2台、診察室1台、処置室1台)のエアコンを使用したところ、いきなりブレーカーが落ちてしまう事象が発生しました。最初は、たまたまなことだろうと思ったものの、実際には何度もブレーカーが落ちて停電になってしまいました。診察中にもブレーカーが落ちてしまうこともありました。これでは、診察がストップしてしまいますし、患者さんにもご迷惑をおかけすることになります。更には、電子カルテに入力していたデータも消えてしまう事態にもなりました。これには困りました。やむなく、ブレーカーが落ちないために、使用するエアコンの数を制限しました。しかしそれでは、診療スペースの室温が上がりません。患者さんが寒い思いをされることになり、申し訳ないと感じました。那須地方は、年が明けると真冬日(一日中氷点下の気温になる日)になることも珍しくありません。このままでは真冬になると正常に診療をすることができなくなるのではととても心配になりました。
とある日、当院の建設に携わった、某住宅メーカーの現場監督X氏(仮称)がやってきました。そのときに、「ブレーカーが頻回に落ちて困る」と相談したことがあります。するとX氏は「電気の使い過ぎですよ~!」とへらへらしながら答えていました。しかし、エアコンなど電気の使用は良識の範囲内で、決して使いすぎではないと思っていました。
なかなかブレーカーが落ちる問題が解決できない中、電気料金の請求書が送られてきました。それを見た時、何か変だぞと気づきました。契約のアンペア数が60A(アンペア)だったのです。また、ブレーカーも60Aのものが設置されているのを確認しました。当院のこの建物で、60Aで足りるのか?と疑問に思いました。そこで、私の生まれ故郷の電器屋さん(93話にも登場)に相談してみました。するとその店主さんは「60Aじゃ、絶対に足りないよね。今は一般住宅でも60Aだから。ましてやクリニックになるともっとアンペア数がなければだめだね。これは明らかに住宅メーカーのミスだからはっきり抗議したほうがいいよ」と助言してくれました。今回の停電トラブルが住宅メーカーのミスによるものと確信し、非常に憤りを覚えました。すぐさま住宅メーカーのX氏に電話を掛けました。X氏が「早急に対処します」といったのに対し、つい私は次のように憤りました。「早急っていつなのですか!?早く対処してほしい。患者さんや職員が非常に困っている。診察中に停電になって、電子カルテのデータが消えたのですよ!そもそも何で60Aにしたのですか?那須の冬は厳しく、氷点下になることも珍しくないのに。電気屋のプロに訊いたら、60Aじゃ全く足りないと言っていたのですよ!今回の件はあなた方に落ち度があることだ。だからあなた方が工事費を負担して今すぐ工事すべきだ!」。普段「仏」といわれている(らしい)私が、「般若」のように憤慨したためか、X氏は驚き、すぐさま電気工事が行われました(もちろん工事費は住宅メーカー負担です)。新たに契約した容量は15kVA(100Vで150Aに相当)。工事が終わったあと、試しに院内のエアコンをフルに使用してもブレーカーが落ちないことを確認いたしました。以後、停電トラブルは一切なくなりました。
なお、当院の建設にあたり、その住宅メーカーとの打ち合わせは何度も行われたものの、ブレーカーに関する話題は一切ありませんでした。60Aのブレーカーはそのメーカーが一方的に取り付けたものです。建設に携わった住宅メーカーや施工業者のうち、神経質性格で心配性の持ち主がひとりでもいたのならば、「この規模の建物で60Aはまずいのではないか、このままでは真冬にエアコンを何台も使うとブレーカーが落ちてしまう」と気づき、建設の段階でアンペア数の見直しができたのではないかと悔やまれます。私の尊敬する森田療法家の先生のお言葉を拝借すると、今回のブレーカーの問題に関して、X氏はじめ当院の建設に携わった人たちは「神経質が足りない!」と言わざるを得ません。