429. 嫌われ祖母の言葉
私の実家から徒歩5分くらいのところに祖父母の家がありました(過去形になっているのは、祖父母が亡くなり実質上の空き家になっているからです)。私が小さいころはよく祖父母の家に行ったものです。祖母は昔から自分の身体の不調について家族に愚痴を言っていました。更には、長男夫婦(すなわち私の両親)に対して執拗な嫌がらせがあったそうです。このことから、家族は祖母のことを大いに嫌っていました。さすがの私も、祖母の晩年のころはほぼ疎遠になっていました。
そんな祖母は、一度だけ戦時中の体験を語ったことがありました。これは私が小学生のころのことと記憶しています。祖母が住んでいた地域(現在の栃木県足利市)では爆撃を受けることはなかったものの、米国機が群馬県太田市方面に向かっているのを目撃し、怖い思いをしたとのことでした(注:太田市には軍用機を製造していた中島飛行機(現・SUBARU)の工場があり、攻撃のターゲットにされました)。そのうえで祖母は次のように話しました。「兵隊さんというのはかっこいいと思うかもしれないけど、実際にはとても格好悪いものなんだ。戦争なんか二度とやってはダメなんだよ」と。
日本は1945年8月15日に敗戦をしてから、今日まで一度も戦争を起こしたことがありません。これも、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」1)した日本国憲法によって平和が維持されてきたといっても過言ではないと思います。しかしこの2026年、政治家らの手によって、日本が誇ってきた「平和主義」が脅かされるのではないかと危惧する声が上がりました。2月の総選挙の直前には、「ママ戦争止めてくるわ」という言葉がSNSで大流行しました。また最近では、各地で戦争反対のデモが盛んに開催されています。一方で、とあるイラストレーターが「世界中から戦争がなくなりますように」と祈る内容のイラストをSNSに投稿したところ、一斉に誹謗中傷されたという出来事がありました。「戦争反対」と唱えると「非国民!」などと非難された、戦前・戦中の日本に逆戻りしてしまったのではと思えてなりません。実際に、90代でご健在の方から、「再び戦前のような雰囲気になってしまった」などと嘆く発言があったそうです。
祖母は一昨年に94歳で死去しましたが、もし祖母が現在も壮健で、2026年の状況を目の当たりにしていたならば、祖母はどんな思いをするのだろうか、とつい想像してしまいます。
どうか日本が壊れませんように。
平和な日本が末永く続きますように。
1) 日本国憲法「前文」から
