50. 森田療法との出会い 後篇
(前回の続き)
1999年4月20日の精神医学の講義プリント。
その日の担当は、生地 新(おいじ あらた)先生(注)だった。
(注)現・北里大学大学院医療系研究科発達精神医学教授
確か、「森田療法は赤面恐怖にも適応となります。
赤面の人に『赤面していいから、前で喋りなさい』などと指導します」
などと教えていただいたのを覚えている。
これを聞いて、もしかすると自分の赤面も森田療法で治るかもしれない、と思った。
その日のうちに、大学のパソコン室へ向かい、
インターネットで「森田療法」を検索した。
そして、北西憲二先生(現・森田療法研究所・北西クリニック)の記事をプリントアウトし、持ち帰って読んだ。
もっともインパクトが強かったのが、
「精神交互作用」の記事だった。
赤面しまい、考えまいと排除しようとすると、それに注意が向いて、
より症状が強まってしまうという内容だ。
これは目から鱗だ。
そして、書店へ行き、森田療法関連の書籍を購入。
むさぼるように読んだ。
100分の講義、集中できるはずがない。
雑念が湧くのは自然。
赤面は排除しない。
etc. etc.
いつしか、赤面や雑念へのとらわれから解放され、
私の友人からは、「最近明るくなったねぇ」と言われるくらいになった。
森田療法の素晴らしさを実感した私は、この療法をもっと世間に広めたい、
そして森田療法の発展に貢献したい、と思うようになった。
それが、私が精神科医になろうとしたきっかけである。
数年後の医師国家試験は余裕でパス。某大学の精神医学教室に入局するのである。
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森田療法との劇的な出会いから、20年。
現在私は、地方都市の小さな診療所で、医療活動を行なっている。
そして、森田療法を日々勉強し続けている。
もし、森田療法に出会うことがなかったら、私はどうなっていたのだろうか?
果たして医師になれたのだろうか?
もしかすると、途中で医学部をやめてしまったのかも・・・
などと考えると、とてもゾッとする。
本当に、森田正馬先生には感謝している。
これからも、森田療法の発展に少しでも貢献できるよう、日々精進していきたい。
(追記)
週1回ペースで更新してきたこちらのブログは、今回で50回目に達しました。そして、今回は「平成」最後の更新となります。
新しい時代「令和」でも、皆様のお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
那須こころの医院 院長 石川 純一