メニュー

どくとるあるぱかのブログ

170. パニック症と飛行機恐怖(2021.08.06更新)

 私が毎月購読しているマンガ雑誌「本当にあった笑える話」(ほんわら)で、楽しみにしている作品の一つに、流水(ながみ)りんこ先生「インド夫婦茶碗」があります。流水先生の旦那様・サッシーさんはインド出身。流水先生が独身時代、インド旅行をしていた時にサッシーさんと出会い、結婚したとのこと。この作品では流水先生夫妻の日常が描かれています。約20年にわたり連載が続いているロングセラー作品です(途中休筆期間あり)。
 ほんわら2020年1月号の「インド夫婦茶碗」1)で、流水先生が20年以上悩んでいた飛行機恐怖を克服したエピソードが掲載されています。とても印象的なお話ですのでご紹介いたします。「長い夏休み」を取った流水先生は、イギリスでのライブチケットを衝動買いしてしまいます。しかしながら流水先生にはパニック症があり、大の飛行機恐怖。イギリスへ一人で飛行機に搭乗する自信がないという悩みがありました。発症のきっかけは、20数年前、家族と飛行機に乗ったときでした。機内で突然吐き気、冷や汗、めまい、震えなどの症状(パニック発作)が出現してしまいました。それ以降、飛行機に乗ると同様の症状が出てしまい、またひどい時期は電車の急行に乗れなくなり、映画館にも入れなくなりました。多忙のため医療機関を受診することはなく、自力で電車やバスなどに少しずつ乗ることで成功体験を重ね、飛行機も誰かと一緒なら何とか乗れるくらいにまで改善したそうです。ただ今回は、イギリスまでの13時間弱のフライト。しかも一人での搭乗。「万一具合が悪くなって死んでしまったら」という予期不安が強く、いっそのこと飛行機をキャンセルすることも頭をよぎってしまいます。しかし「ひとりで飛行機も乗れない、行動もできない、それで一生を終えるのは嫌だ!」と感じたことから、フライトを昼間の便から超深夜の便に変更し、「もうやるっきゃね~ッ」と搭乗します。機内食をかき込み、そのまま爆睡(そのための深夜便です)。そして目が覚めたら、そこはロンドンでした。長年悩ませていた飛行機恐怖を克服してしまいました。
 当院でも、飛行機に対する恐怖を抱かれるパニック症の患者さんが来院されます。診察では、「飛行機に乗るにはどうすればいいか」というご相談をいただきます。それに対し、「今後旅行や冠婚葬祭などでどうしても飛行機に乗らなければならない場面に遭遇すると思います。その際はおっかなびっくりで乗ってください。万一発作が起きた場合には苦しくなりますが、数十分で自然に治まります。ビクビクハラハラしているうちにいつしか目的地に着きます」とお伝えすることにしています。その際、16話の「夕立」の例えもよく出します。どうしても心配な方に対しては、搭乗前などに服用するための抗不安薬を処方することもあります(当院では依存性などのリスクのあるベンゾジアゼピン系薬剤(37話など)はなるだけ処方せず、安全性の高いものを出しています)。
 なお最近では、飛行機搭乗を疑似体験できるVRゴーグルが開発され、飛行機恐怖に対する暴露療法として用いられているそうです。しかしこのような「練習」は一切不要と私見では考えております。むしろ私は、どうしても飛行機に乗らなければならない際にはぶっつけ本番でおっかなびっくりで乗ってしまうことを勧めています。先述の流水先生のエピソードは大変参考になることでしょう。

【文献】
1) 流水りんこ:インド夫婦茶碗.本当にあった笑える話 2020年1月号,ぶんか社,2019.

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME