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101. 青木薫久先生の訃報にふれて

[2020.04.17]

 先日届いた、高良興生院・森田療法関連資料保存会のニュースレター「あるがまま」に、青木薫久(あおき・しげひさ)先生の訃報が載せられていました。
 青木先生は、1931年生まれ。東京慈恵会医科大学の高良武久教授に師事、森田療法を学ばれました(高良先生は森田正馬先生の直弟子でいらっしゃいますので、青木先生は森田先生の孫弟子にあたります)。森田療法に関する様々な著書を執筆され、特に1978年に出版された「なんでも気になる心配性をなおす本」(KKベストセラーズ)1)は、途中で新装版2)としてリニューアルされながらも、現在も販売を続けている、ロングセラーです。また、地球環境維持のための人間の生き方について、森田理論の方面から研究され、発表されました2)(グリーン森田理論)。森田療法以外の分野では、精神科医療における人権と法についても研究され、「保安処分の研究」3)というご著書も出版されました。

 ところで、私は大学生時代、強迫などにひどく悩んでいた中、大学の精神科の講義で森田療法を知り、森田療法を学ぶことで回復していったことは、48話49話50話で書いた通りです。その際、様々な森田療法の書籍をむさぼるように読みました。その中の1冊が、青木先生の「心配性をなおす本」1)でした。古本チェーン店で偶然見つけて購入したものです。いろいろあった森田療法関連の書籍の中で、こちらのご著書が一番読みやすく、インパクトがあったことを覚えています。
 私が大学6年生の頃のお話です。精神科での臨床実習の際、医局のとある先生から、青木先生が近くの精神科病院にて外来診療をされているとのお話を伺いました。是非とも青木先生にお会いしたいと思い、先生の外来を受診することにいたしました。
 診察の場で、私はかつて強迫でひどく悩んでいたこと、森田の書籍で回復したことを青木先生にお話いたしました。それに対し青木先生は、「素晴らしい!」「よく強迫を苦しみを乗り切りましたね。頑張りましたね」とのお褒めの言葉をくださいました。大変ありがたかったです。
 当時私は、医学部卒業後の進路に悩んでいました。森田療法を普及・発展していきたいという夢をいだくようになり、精神科へ進みたいという気持ちがありました。しかしながら、私は口下手というコンプレックスがありました。更には、幼少期から吃音に悩んでいました。口下手で「どもり」があっては、到底精神療法を行なうのは無理ではないかという思いから、精神科を断念し別の診療科に進むことも考えていました。それだったら、口下手でも診療はできるだろうと。その悩みについて青木先生に相談しました。
 青木先生は「どもりは大丈夫ですよ。治りますよ。」とコメントされたうえで、「口下手でもいいではないか。患者さんに分かりやすく説明するよう努めればそれでよいではないか」とおっしゃいました。これは目から鱗でした。これはまさしく森田正馬先生の「目的本位」(31話)の構えではないか。このお言葉がきっかけで、私は精神科医の道へ進むことを決心したのです。
 2002年に医師国家試験に合格した際には、すぐに青木先生に電話で合格の報告をいたしました。青木先生は大変喜んでくださって、「あなたは森田療法にぴったりです。頑張りなさい」とのお言葉をくださいました。
 私がドクターになってからはしばらく青木先生にお会いする機会がなかったのですが、2017年の「心の健康セミナーin岡山」で青木先生がご講演されるというお話を伺い、岡山に伺いました。青木先生とは15年ぶりに再会いたしました。御年86歳(当時)。とてもお元気そうでした。「森田療法をされているのですね。素晴らしい!」とのありがたいお言葉を頂戴いたしました。ご講演では、青木先生の一言一言が我々聴取者にズシーンとのしかかってくるようで、とてもインパクトのあるものでした。殊に、「ノイローゼ(神経症)になったということは、勲章をもらったのと同じなのだよ」との青木先生のお言葉には大変感動いたしました。私も、ノイローゼという勲章を大切にしたいと感じたのでした。

 謹んでお悔やみ申し上げます。合掌。

 

【文献】
1) 青木薫久:なんでも気になる心配性をなおす本.KKベストセラーズ,東京,1978.
2) 青木薫久:《新装版》なんでも気になる心配性をなおす本 よくわかる森田療法・森田理論.KKベストセラーズ,東京,1999.
3) 青木薫久:保安処分の研究 精神医療における人権と法.三一書房,東京,1993.

 


私の部屋の本棚。青木薫久先生のご著書も並べております。
一部は青木先生から頂いたものです。

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