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108. 内気な性格は武器になる

[2020.06.05]

 私は毎月、雑誌PHPを購入しています。毎回、著名な方のインタビュー記事が載せられており、よりよく生きるためのヒントが盛り込まれています。たいていの書店やコンビニ、スーパーで販売されており、盛りだくさんの内容でありながらも、220円(税込、2020年6月現在)で買えるのがうれしいところです。
 PHP6月号の特集は、「ひかえめだけど、芯の強い人」。5人の方のインタビュー記事が載せられています。その中で最も印象に残ったのは、サイレントセールストレーナーの渡瀬謙さんの記事「内気な性格は武器になる」1)です。渡瀬さんは「しゃべらない営業」のトレーナーとして活動されている方です。
 以下に記事の要点を書き出します。

 渡瀬さんは幼いころから極度の人見知り。学校でもクラスで一番の無口で、自分の考えや主張がなく、いつも周りの意見に従っていました。心の中では、自分の意見をはっきり持ちたい、もっと堂々としたいと悩んでおり、自分の性格を直したいと考えていらっしゃったそうです。
 その渡瀬さんは、大学卒業後、測量機器メーカーを経てリクルートの営業職に転職。周りの社員は普段の話が面白く、営業が天職のような人たちばかり。渡瀬さんは劣等感を抱き、会話を磨かなければとビジネス書を読み漁りました。しかしその通りにやってみようとしても失敗ばかりでした。
 そんな失意の中、部署のリーダーと客先に同行することに。そのリーダーは話を盛り上げることはせず、むしろお客さんの話を集中して聞き、大事なことは資料で伝える、ということをしていました。それを見た渡瀬さんは衝撃を受けました。そのスタイルなら自分にもできるかもしれないと気づき、以後トークの練習は取りやめました。営業では「しゃべるのが下手なので」と資料を渡し、お客さんに話してもらう空気を作るように心掛けたそうです。その結果、「誠実そうだ」と気にかけてくれる人も多く現れ、営業成績は上昇。数か月後にはなんと全国営業達成率トップになりました。渡瀬さんは、内気な性格も武器になるのだと実感されたそうです。

 そのストーリーを拝読し、森田療法の重要ワード「両面観」70話71話72話)を思い出しました。「両面観」とは、それぞれの性格にはプラスとマイナスがあるということです。
 内気な性格は、営業に不向きで、欠点であり、直すべきものというイメージがつきまといます。しかしながら渡瀬さんは、この性格のプラスの面について次のように説明されています。「話すことに緊張するから、言葉選びに慎重になるし、事前の準備も念入りに行なう。それは人と信頼関係を築くうえで有利に働きます。」1)
 一方で、おしゃべりな人は一見すると営業向きと思われますが、マイナスな部分もあります。それは、軽率なことをしゃべってしまい、信頼されなくなるリスクがある、ということです。特に営業活動での失言は致命的にもなりかねませんから。

 結論として、内気な性格の人は営業の仕事に向かないということではは決してなく、また自らの性格を変える必要も全くないということです。自分の性格のプラスの面を活かすことで、立派な仕事をこなすことも可能なのだと、渡瀬さんのインタビュー記事を拝読し感じました。

【引用文献】
1) 渡瀬謙:内気な性格は武器になる.PHP,865,30-32,2020.

 

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