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124. きつおんガール

[2020.09.25]

 エッセイ漫画「きつおんガール うまく話せないけど、仕事してます。」1)を拝読いたしました。著者は、吃音(きつおん)の当事者で、現在社会福祉士として勤務されている、小乃おのさん。著者が3歳の頃に吃音が始まってから、小学、中学、高校、大学時代を経て、社会福祉士の資格を取得して現在に至るまでの、自身の吃音の体験をもとに描かれている作品です。漫画の途中にある解説のコーナーは、吃音をご専門にされる医師・菊池良和先生が担当されています。

 吃音は、最初の言葉を繰り返したり(連発)、引き伸ばしたり(伸発)、詰まったり(難発)する症状1)が特徴です。このため、実際に言いたいことを言えずにため込んだり、人前に出るのを避けたりと生活に支障が生じ、更には学校などで周囲からしゃべり方についてからかわれ、不登校に至るケースも稀でないといわれます(89話)。
 本作品のストーリーは著者が3歳の頃のお話から始まります。著者の吃音に気づいたお母様が思い悩み、幼稚園の保健室の先生に相談します。すると「親の育て方のせいだ」と言われてしまい、その言葉にお母様は傷つきます(注:なお現在では、吃音は「親の育て方」のせいではないとされています)。著者が学校に上がってからは、自身の吃音に悩むようになります。朝の会で必ず行なわれる「健康観察」の時間は、毎回緊張を伴います。「はい、元気です」としゃべる時に、もし吃音が出てしまったら、周りから馬鹿にされるのではという恐怖からです。国語の音読の時間も非常に苦痛です。この学級では一人ずつ順番で一段落ずつ音読し、間違えたら次の人に代わるというルール。頑張って読んだ結果吃音が出てしまい周囲から笑われるのは避けたい。著者はわざと間違えて次の人にまわすという選択肢をとります。ただ、「心の中ではきちんと読めるのに」と非常に悔しい気持ちだったと述べられています。それ以外にも、自身の吃音にまつわるエピソードがつづられています。詳しくは本書をお読みください。
 実は私も幼少期から吃音がありました。私の小さいころは吃音についての正しい考え方が普遍しておらず、周囲からは精神論でしゃべり方を治せなどと言われました(特に小学5年の担任S教諭は、クラスの40人くらいの児童がいる中で私のしゃべり方について散々馬鹿にする発言をしてきました。これは30年以上経った現在でも許せません)。しかし近年では吃音についての書籍が登場し、テレビ番組でも取り上げられるようになり、正しい知識が啓蒙されつつあります。ただ、自身の吃音体験を描いた漫画はもしかすると本作品が初めてではないでしょうか。活字の本とは異なり、漫画ならスピーディに内容が把握できますし、小さいお子様にも読めます。しかも本作品のキャラがとても可愛らしく、親しみやすいタッチで描かれています。吃音の正しい理解のためにも、是非とも学校の図書室に1冊、置いてほしい作品と考えております。

 「きつおんガール」を世に出された、小乃おのさんに、敬意を表します。

【引用文献】
1) 小乃おの(著)、菊池良和(解説):きつおんガール うまく話せないけど、仕事してます。合同出版,東京,2020.
(当院の待合室の本棚に1冊置いてあります)

 

 

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