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137. 「デパスの危険性」を公開して

[2020.12.18]

 今年7月に「デパスの危険性」(112話)の記事を公開いたしました。公開後多くのアクセスがあり、わずか5カ月で4万を超える閲覧数を頂いております。大変驚いております。もちろん当院ウェブサイトの記事の中で閲覧数第1位です。この記事に関して、遠方の方からお問い合わせのお電話を頂戴することもありました(注)
 この記事の公開に踏み切ったのは、他の医療機関であまりにもデパス(一般名:エチゾラム)の処方が多いと感じたからです。この危険性の高い薬が安易に様々なところで処方されるのを目の当たりにし、危機感を覚えました。実際、当院に来院される患者さんのお薬手帳を拝見すると、よくデパスの記載を目にします。デパスが処方された経緯を伺うと、「(原因不明の身体症状に対して)気持ちの問題だからと言ってデパスが出された」とか、「白衣高血圧と言われたから」とか、「肩こりに対して」とか、「夜眠れないから」「緊張をほぐすため」・・・などなどの理由でこの薬が出されたとのことでした。また、市内の某内科医院にて、患者さんに対し「このような症状にはデパスを飲むといいのよ」などと、やたらにデパスを推奨する職員がいるという情報を耳にしたことがあります。この職員は高齢の患者さんにもデパスを積極的に勧めているそうです。これらの高齢者がデパスを飲み続けているうちに、将来転倒して骨折→寝たきりになってしまうのではとか、意識障害などが生じてしまうのではないかと、心配になってしまいます。更には認知症のリスクも指摘されていますから。
 デパスの最も厄介な点は、飲み続けるとなかなか服用をやめられないことです。これは依存性の強さにあります。わずかな量でも減らそうとすると、様々な離脱症状が出現することがよくあります(112話参照。なお離脱症状の程度は、患者さんによって個人差はあります)。
 なぜこのような危険性の高い薬が安易に様々なところで処方されてしまうのか。おそらく「デパスは切れ味が良いし、弱くて安全な薬だ。精神的なものに気軽に使える」という誤解を多くの医師が抱いているからだと推測されます。数年前までデパスが向精神薬に指定されていなかったことも、「気軽に使える安定剤」というイメージを与えてしまった要因と感じます。現在ではようやく向精神薬指定のため30日処方制限になっていますが、それまでは一度に2~3か月分の処方は平気で可能でしたから。
 私は、当院にいらっしゃる患者さんに対し、デパスのリスクについて説明しております。もちろん急激な減量は離脱症状を起こす恐れがあることもあわせてお伝えします。また、当院にご紹介してくださった先生に対しお返事を差し上げる際、紹介元でデパスが処方されている場合、デパスのリスクについて一言コメントすることもあります(ただし、せっかくご紹介いただいたので、相手の先生に角を立てないよう、やんわりとした表現をするよう心掛けております)。当院ブログ112話をプリントアウトし、お返事に添付することもあります。
 今後も私は地道にコツコツ、デパス(やその他ベンゾジアゼピン系薬剤)の危険性について啓蒙していきたいと考えております。

(注)当院ウェブサイトの記事に関するお問い合わせのお電話、お手紙等は当院では一切承っておりませんのでご了承ください。

 

 

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