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187. 不安は欲望の裏返し

[2021.11.26]

 11月20~21日、第38回日本森田療法学会がWebで開催されました。本来ならこの学会は昨年に福岡市の九州大学で開催予定でした。しかし新型コロナの影響で1年延期となり、さらには感染拡大により現地開催ができないことからWeb開催に切り替えられました。会長講演、シンポジウムなどの主要なプログラムは生中継されたものの、一般演題はオンデマンド配信のみとなりました。今回も私は一般演題で発表しております。発表に際し、事前に音声付きのスライドのデータを作成し、学会事務局に提出いたしました。その発表スライドが12月3日まで配信されています(学会に参加登録された方のみ視聴可能です)。
 さて、1日目は土曜日で通常の診療でしたので、ほとんどのプログラムに参加できませんでした。毎年楽しみにしているケース検討会「ケース・スーパービジョン」も、診療時間とダブってしまうため、泣く泣く参加は断念しました。一方2日目は日曜日で休診でしたので、自宅で大部分のプログラムを拝見することができました。
 2日目の最初のプログラムは「若手森田療法家企画シンポジウム」でした。そこで、大学教官を務められるとある先生が、学生に対して森田療法の講義をした際のお話をされました。講義のあとに学生から提出された感想レポートに、「『不安は欲望の裏返し』というところが印象に残った」という記述が多かったとのことでした。聴講していた学生たちはおそらく、不安は悪者、不安は無くすべきもの、という観念を抱いていたのでしょう。そんな中で、「不安と欲望は表裏一体」「不安は自然現象」などという森田療法の理論を聞き、とても斬新な思いをしたのではないかと勝手に想像いたしました。
 当院の森田療法のページに記しました通り、森田療法では、不安は自然な感情であり、「生きたい」「~したい」という欲望(生の欲望)と表裏一体の関係であるという考え方をとります。私は診療において、「不安になるということは悪いことではないんですよ」とか「不安は自然現象。不安になっても自分のやるべきことができればOKですよ」などとお伝えすることがよくあります(注)。軽度の神経症の患者さんの場合、この説明でかなり納得され、必要最低限のお薬(ケースによってはお薬なし)で乗り越えられる患者さんもいらっしゃいます。
 「不安は欲望の裏返し」という森田の考え方は、このストレス社会を生きていく上でとても大切なものだと考えます。この考え方を義務教育で是非とも取り上げてくれるといいなぁとつい思ってしまいます。

(注)このような説明をするのは、森田療法の適応のある患者さんに限定しています。一方、うつ病や統合失調症などの極期で生じる不安は明らかに病的なものです。これらのケースでは、安易に森田療法的な説明をするのは慎むべきであり、まずは休養や薬物療法などその疾患に準じた治療を行なう必要があります。

 

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