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269. 飲酒運転に対する罰則、行政処分

[2023.06.02]

 前話「巡査3人の飲酒運転をめぐる一考察」を執筆した際に、飲酒運転で捕まった場合、どのような刑罰や行政処分を受けることになるのか、とても気になりました。そこで、関連のサイト1)や免許更新の際にもらった教則本2)で調べてみることにしました。

 調べてみた結果、大切な点は次の2点であることが分かりました。
1.飲酒運転では、「交通反則通告制度」(※)の対象にならず、「懲役または罰金」の刑罰を受けることになる!
(※)「交通反則通告制度」:比較的軽微な違反(反則行為)をした際に、一定期間に所定の反則金を納付した場合には、刑事裁判や家庭裁判所の審判を経ないで事件が処理される制度。

2.飲酒運転で捕まった場合、たとえ事故を起こさなくても、必ず免許停止あるいは免許取り消しになる!

 具体的に説明いたします。
なお、飲酒運転には「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」があります。その違いは次の通りです。
酒酔い運転:飲酒量や呼気中アルコール濃度などに関係なく、言語態度、歩行能力、直立能力が正常でないなど、酩酊状態で運転する行為
酒気帯び運転:呼気0.15mg/l以上または血液0.3mg/ml以上のアルコールを体内に保有した状態で運転する行為

罰則

ドライバー本人だけでなく、車両を提供した者や酒類を提供した者、同乗者にも刑罰が科されます。

運転者
・酒酔い運転:5年以下の懲役または100万円以下の罰金
・酒気帯び運転:3年以下の懲役または50万円以下の罰金

車両の提供者
・(運転者が)酒酔い運転:5年以下の懲役または100万円以下の罰金
・(運転者が)酒気帯び運転:3年以下の懲役または50万円以下の罰金

酒類の提供者または同乗者
・(運転者が)酒酔い運転:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
・(運転者が)酒気帯び運転:2年以下の懲役または30万円以下の罰金

 

行政処分

酒酔い運転:違反点数35点 免許取り消し(欠格期間3年)(注)

酒気帯び運転:
(呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上0.25mg/l未満)違反点数13点 免許停止90日(注)
(呼気中アルコール濃度 0.25mg/l以上)違反点数25点 免許取り消し(欠格期間2年)(注)

(注)前歴及びその他の累積点数がない場合

それだけではありません。飲酒運転が原因で解雇されるなど、社会的制裁を受けることはよくあることです。飲酒運転で事故を起こしてしまった場合には、自動車保険の支払限度額を超えた損害賠償を負うことになり、生活が破綻するケースもあります2)

 1999年の東名高速飲酒運転事故や2006年の福岡海の中道大橋飲酒運転事故の際に、マスコミが飲酒運転について大きく取り上げたことがきっかけに、飲酒運転に対する厳罰化が進むようになりました。しかしながら飲酒運転による事故はゼロになっていません。「常習飲酒運転者に講ずべき安全対策に関する調査研究」3)によると、免許停止と取り消しの処分者を対象にアルコールスクリーニングテストを施行したところ、飲酒運転再犯者のうち34.4%がアルコール依存症の疑いとされるという結果だったとのことです。アルコール依存症の症状に、飲酒のコントロール障害があります。これは、飲酒の量や時間などの制御が利かなくなり、飲酒のTPOも守れなくなるという症状です。よって、自動車の運転の前に飲酒してはならないと思いつつも飲まずにはいられないという状況にもなりえます。その当事者にいくら「飲酒運転をしない強い意志を持つように」と説教したとしても、効果は限定的です。よって、自力ではとても飲酒がコントロールできない状態になった場合は、アルコールの専門治療を検討したほうがよいでしょう。

★アルコール依存症の基礎知識につきましてはコチラをご参照ください。

 

【引用文献、サイト】
1) 警察庁 みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/info.html
2) 【交通の方法に関する教則】準拠 安全運転を確かなものにするために 2018年4月
3) https://www.npa.go.jp/koutsuu/menkyo1/h20houkoku.pdf

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