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27. 感情の法則(前篇)

[2018.11.16]

 「この不安がなくなれば!」「気持ちを楽にしたい!」これは誰もが願うことです。

 しかし、森田療法では、「自分の意思では気持ちや感情はコントロールできない」というのが基本原則です。不安や気持ちはお天気と同じように自然に生じるものであり、自分の力で変えられるものではない、というのが森田の解釈です。科学が発達した現代でも、雨や嵐を人間の力で晴れにすることはできません。台風がどう進むかも自然に任せるしかなく、人間はそれに備えることしかできません。これと同じように、嫌な感情や気持ちも操作せずそのままにしておくしかないのです。

 逆に、この不安をなくそうとして紛らわし行為をしたり、怒りがひどいからと物にあたったりすることで、ますます嫌な感情は増幅されていきます。これは森田の「精神交互作用」によるものです。

 さて、森田正馬博士が提唱された「感情の法則」は、日常生活に大いに有用なものであり、ここに紹介いたします。

 以下の5つからなります。

1.感情は、そのまま放任し、またはその自然発動のままに従えば、その経過は山形の曲線をなし、ひと昇りしひと降りして、ついに消失するものである。

2.感情はその衝動を満足すれば、急に静まり消失するものである。

3.感情は同一の感覚に慣れるに従って、にぶくなり不感となるものである。

4.感情は、その刺激が継続して起こる時と、注意をこれに集中する時に、ますます強くなるものである。

5.感情は、新しい経験によってこれを体得し、その反復によって、ますます養成される。

 

2の例:どんなに空腹感があったとしても、食事をとれば満足し空腹感は消失します。また、入学試験の後合格できるだろうかという不安も、合格発表で自分の番号を見つけると瞬時に不安から喜びに変わります。

3の例:高級料理を初めて味わうときは非常に感動するものですが、それを毎日食べているとさすがに飽きてくるでしょう。また、強い対人緊張を有する人も、おっかなびっくりで毎日接客をすることで、次第に慣れてくるものです。

5の例:初めてマラソンコースを走るときは非常に苦しいですが、無事完走すると達成感を味わい、これからもマラソンを続けたいという気持ちになります。そしてトレーニングを積み重ねることで、タイムもますます良くなります。

 

 森田先生の「感情の法則」の中で、私が日常の診療でよく用いているのは、1と4です。それについては次回書きます。

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