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44. 数字にまつわる縁起恐怖

[2019.03.15]

 今回は第44回。「4」が2つ並んだ数字の回です。
 わが国では、「4」と「9」は不吉な数字とされています。「死」と「苦」を連想させるからです。
 私は幼少期、祖父母が経営する古いアパートの周囲でよく遊んでいました。そのアパートは8部屋あり、1~10号室までありました。ただし、4号室と9号室は欠番でした。それに疑問を持った当時の私は「なんで4と9がないの?」と祖母に訊ねたことを覚えています。なお、この建物は約30年前に取り壊され、別のアパートに建て替えられています。
 一方、キリスト教圏では「13」が忌み嫌われます。海外からの旅行者に配慮しているためか、13階が欠番となっているホテルを見かけたことがあります。

 ところで、精神科医療で取り扱われる症状として「縁起恐怖」というものがあります。これは、縁起の悪いものに出会うと、自分に悪いことが起こるのではないかと恐れることです。この不安を打ち消そうと繰り返しの行動(これを「強迫行為」といいます)をしてしまい、日常生活に著しく支障をきたすケースもあります。

 その中で、冒頭で触れた「4」「9」「13」などの「忌み数」に出会うと自分に不吉なことが起こるのではと恐れる、数字に関連した縁起恐怖もあります。
 これが今回のテーマです。

 ここでは、3人の方のケースを紹介します。

・現・東京慈恵会医科大学附属第三病院院長の中村敬先生の著書1)に、学校の先生のケースが掲載されています。4,9,13がとても恐ろしく、買い物のおつりが49円になった場合、不吉な感じが出て、その品物を返して買わずに帰ってしまうそうです。また、車での通勤の際、道路標識の「4」が目に入った瞬間に恐ろしくなり、いったん家まで引き返してしまう状況で、その結果学校に頻繁に遅刻してしまいます。

・三島森田病院(静岡県三島市)に勤務されている精神科医、南條幸弘先生は「神経質礼賛」というブログを執筆されており、そのブログ本2)も出版されています。そのブログに、ご自身の小学生時代の神経症体験が載せられています。廊下を歩く歩数を数えて、末尾が4とか9になるのを嫌って、歩数を調整するという不自然な歩き方をされていた、と告白されています。

第32話でもご紹介した、漫画家・たかはし志貴先生のコミックエッセイ3)に、著者の縁起恐怖の体験が描かれています。まず、メールを送る際に、4と9のつく時刻は避けているとのこと。また、受験生時代のエピソードも紹介されています。「『5』以外の数は縁起が悪い」という観念にとらわれ、シャンプーやリンスのボトルを押す回数は、常に5回。お母さまの「最近シャンプーの減りが早いんよなぁ」というつぶやきに気づき、ボトルの押す回数を減らそうとしても、うまくいきません。「5」と「うかく(合格)」を関連づけ、もし5以外の回数にしてしまい、志望校に合格できなかったらどうしよう!という不安がよぎるためです。合格祈願で神社を訪れた時も5にこだわります。鈴を鳴らす回数、拍手の回数、おみくじを引く回数はすべて5回。お賽銭も555円と徹底的です。

 上記の3人のケースの状況をお読みなり、あたかも滑稽なように思えるかもしれません。しかしながら、ご本人にとってはたいへん苦痛なのです。強迫行為は、自分自身でばかばかしいと思っているのにかかわらず、やらずにはいられないのが特徴です。周囲の方は、その本人の辛さをしっかりと理解すべきです。

 

【引用文献】

1) 中村敬:神経症を治す 患者さんと家族、同僚の方へのアドバイス. 保健同人社, 東京, 2008.

2) 南條幸弘:神経質礼賛 精神科医からの応援歌. 白揚社, 東京, 2011.

3) たかはし志貴:バセドウ病が原因でした。おまけに強迫性障害も! ぶんか社, 東京, 2018.

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