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51. 令和の時代と森田療法

[2019.05.03]

 先日私は、福井県の永平寺を訪れました。

 親鸞聖人の研究のため、何度か浄土真宗の本願寺には伺ったことがありますが、曹洞宗の大本山・永平寺は初めての来訪です。浄土真宗の本願寺は、御影堂と阿弥陀堂が兄弟のように並んでいるのに対し、曹洞宗の永平寺では「七堂伽藍(しちどうがらん)」と呼ばれる7つのメインの建物とそれに付随する建築物から構成されており、複雑な構造です。また、永平寺の構内を巡っていたところ、修行僧の姿もお見かけすることができました(一方浄土真宗では修行という概念はないという話を伺ったことがあります)。同じ仏教でも、宗派によってかなり大きな違いがあるものだと実感いたしました。

 さて、永平寺の入り口近くの観光案内所に立ち寄ったところ、このようなものを見かけました。

「AIコンシェルジュ小梅ちゃん」
画面上の女の子「小梅ちゃん」に話しかけると、観光案内をしてくれるというものです。英語、中国語(簡体、繁体)にも対応しており、人工知能(AI)の技術が使われているそうです。

 これを見て私は、未来の精神科医療にもAIが使われる時代がくるかもしれないと思ってしまいました。

 そして、精神科医療の将来像について空想してしまいました。
 下記にその内容を書き出します。

 時は令和XX年。「ヴァーチャル心療内科ドクター(仮称)」が普及しつつある時代。平成や令和初期までのように患者はクリニックや病院に出向く必要がない。タブレット端末があれば自宅でも受診可能。画面上のドクター(の二次元キャラ)に話しかければ、最高性能のAIにより、診断や生活指導をしてくれる。薬の処方も最新のエヴィデンスに基づき薬剤選択される。タブレットを調剤薬局へ持っていけば、それが処方箋代わりになる。診察料はクレジットカードで決済可能。
 この「ヴァーチャル心療内科ドクター」のすごいところは、ドクターのキャラを患者の好みで変えられることだ。イケメン、お嬢様風、初老期のおじさんなど自由に選択可能である。

 このようなことを空想し、私は思わずゾッとしてしまいました。これが普及してしまうと、精神科・心療内科のクリニックは一気に淘汰されてしまうのではないかと。先述の「ヴァーチャル心療内科ドクター」があれば、医療機関まで行く必要がありません。待ち時間もありませんので、待合室でずっと待たされてイライラすることもなくなります。しかも、私のような丸坊主の残念な顔のおっさんに比べれば、二次元キャラでもイケメン医師の方が良いに決まっています(自虐ネタですみません)。

 私もAIに負けてはいられません。AIに打ち勝つ手段は、やはり精神療法、特に森田療法ではないかと。

 森田療法の最大の特徴は、表面上の症状にはあまり触れず、むしろ患者のベースにある「生き方」を問う精神療法であるということです。しかも、患者の「体験」を重んずる精神療法でもあり、机上論などの頭でっかちな姿勢はたちまちに排除される傾向にあります。このような療法は、やはり生の人間でないと治療者になれないでしょう。いくらテクノロジーが進歩したとしても、機械が人間の「生き方」や「体験」に入り込むことは困難なのでは、と思っております。

 5月1日、「令和」の時代が始まりました。令和の時代になっても、不安や恐怖を完全に除去する治療法はできないでしょう。不安は「よりよく生きたい!」という欲望と表裏一体の関係であり、自然なものであるからです(これは森田療法での解釈です)。

 森田療法が森田正馬先生により創始されたのが、今からちょうど100年前の1919年です。以後大正、昭和、平成の時代において、森田療法は神経症に対する治療法のみならず、悩むひとびとの「生き方」の再教育として一役買ってきました。新しい時代・令和でも、そしてそれからの時代においても、人間の不安や悩みに対する処方箋として、森田療法が大いに役に立つものと確信しています。

 今後も私は森田療法の素晴らしさを発信すべく、精進して参ります。

 

 

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