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61. スカッとした体験 前篇

[2019.07.12]

 最近私が毎月購読しているマンガ雑誌に「本当にあった笑える話」(ぶんか社)があります。略称は「ほんわら」。
 この雑誌で最も楽しみにしている作品は、たかはし志貴先生(32話44話参照)の「地方で大家さんやってます。」アパートやマンションの経営をされている、著者のお母さまが主人公で、地方の不動産の実情や大家さんの苦労を描いた内容です。また、発達障がいをカミングアウトされ、テレビにも出演されている漫画家・沖田×華(おきた・ばっか)先生の「毎日やらかしてます。」も面白い。ご自身の障がいにまつわるエピソードが赤裸々につづられています。その他にも、様々な漫画家さんによる、思わず笑ってしまうような作品が盛りだくさんです(中にはシリアスな内容の作品もあります)。

 この雑誌のメインコーナーは、読者から投稿された笑える体験談を4コマ漫画にしたものです。毎号テーマが決められており、それにちなんだ体験漫画が掲載されています。例えば、「毒友・毒親・毒老人」(8月号)、「令和最初の恐怖体験」(6月号)、「平成最後のダマされた大賞」(5月号)・・・です。

5月30日発売の7月号1)は、「スカッとした話」が特集でした。

61honwara

ここでは4つの「スカッとした話」の作品を紹介します(引用した作品のページも併記します)。

・危険な追い越しをしていった車が、数分後川に転落していた。(p.16)

・上の類似ネタ。車を運転中、あおり運転にあった。非常に腹が立った。しばらくすると、脱輪している車を発見。その車は先ほどあおり運転をしてきた車だった!思わず笑ってしまった。(p.28)

・とある女性が店のレジに並んでいると、男性がその女性の前に割り込んだ。女性はイラつくが、怖くて注意できない。その男性の番になると、レジのおばちゃんが「割り込みはダメ。最後尾に並びなおしてください」と注意。おばちゃんナイス!(p.25)

・有名大卒のAは役者志望の「僕」をバカにしてきた。その後「僕」は役者としては成功しなかったが、その時作った人脈で会社を設立。その会社は波に乗ることに成功し、今ではAの勤める会社を子会社にしている。(p.44)

 人は誰でも、不快に思っている相手や妬ましいと思っている人に不幸が起こると、快感を覚えるのではないでしょうか(不謹慎な感情ではありますが)。その「スカッとした体験」を、ドイツ語で「シャーデンフロイデ(Schadenfreude)」と呼んでいます。また日本語では、「他人の不幸は蜜の味」という表現があります。

 

  この「スカッとした体験」に関連した脳科学の研究があります。2009年に米国の科学雑誌「サイエンス」に掲載された、高橋英彦先生(現・東京医科歯科大学教授)らによる研究2)です。

 この研究については、次回詳述します。

 

【引用文献】
1) 本当にあった笑える話 2019年7月号.ぶんか社, 東京, 2019.
2) H. Takahashi, M. Kato, M. Matsuura, et al. : When Your Gain Is My Pain and Your Pain Is My Pain: Neural Correlates of Envy and Schadenfreude. Science 323, 937-939,2009.

 

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