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7. 【ネタバレ注意!】「キスできる餃子」を森田療法風に解釈してみた

[2018.07.04]

 これは、「6.『キスできる餃子』と森田療法(?)」の続きの記事です。

 

(注)この記事には、映画作品「キスできる餃子」のネタバレが出てきます!ご注意ください!

 

 私が着目したのは、人気プロゴルファー・岩原亮の行動でした。亮は好調だった昨シーズンとは違い、今シーズンは成績不振に陥ります。マスコミに追及された彼は「怪我をしている」と嘘を言い、逃げてしまいます。

 逃げること自体は全く悪いことではありません。心身ともにボロボロになった場合には、一時的に安全な場所に身を隠すことも、どうしても必要なこともあります。ただし逃げたとしても、スランプの原因を分析し、練習を積み重ねるなど、悩みに向き合う行動があれば良いのです。しかし亮がとったのは、夜の街で女性と遊ぶなど、悩みや苦痛から逃れようとする行動でした。その結果、女性2人と歩いている姿を新聞記者に目撃され、そのスクープ記事を新聞に載せられてしまいます。窮地に陥った亮は東京から宇都宮に逃亡します(東京から宇都宮は新幹線でわずか50分です。逃げるにしては距離が近すぎるのでは、というツッコミはさておき・・・)。宇都宮では偽名を用いて逃亡生活をしますが、地元の人にバレて、スマホで写真を撮られてしまいます(彼は逆上して、相手のスマホを壊してしまいます)。苦悩から逃げようとした結果、かえって悩みは深まりどんどん状況は悪化していったということです。

 私は亮のこれらのシーンを観て、彼の行動が森田療法の「はからい」に当たるのかなぁと思いました。「はからい」とは、不快な気持ちや悩み、症状を感じまいと、紛らわし行動をしたり、逆に日常での必要な行動から回避したりすることです。このような行為をしても、悩みは解決しないばかりか、別の悩みが増え、それからも逃れようとすることでますます苦悩が強まり、事態はさらに悪化するという悪循環に陥ってしまいます。

 この亮の「はからい」をやめるきっかけになったのは、陽子の「ビンタ(!)」でした(ビンタのシーンは、公式ホームページの予告動画でも観ることができます)。陽子は、餃子屋の再建と餃子会再加盟を目標に、四六時中、徹夜までして、餃子の試作に取りくみます。森田療法的に解釈すれば、「自分のオリジナルの餃子がみんなに認められたい!」という「生の欲望」(エネルギー)が、きちんと建設的な行動として発揮されているということです。その陽子の前で、亮がゴルフやめようかな、などと情けないことを言うものですから、陽子がキレてビンタするのも当然です。ただ、その出来事がきっかけで亮の構えは少しずつ変わります。陽子の餃子づくりの奮闘ぶりにあやかりたいと思ったのでしょうか、彼はついには復帰戦出場を決意します。すなわち逃亡生活をやめて、悩みに直面するということです。

 この姿勢を森田療法では、「恐怖突入」と言っています。これは、恐れ、悩み、不安などの気持ちを抱えつつ、おっかなびっくりでやるべきことに突入していくことを言います。森田療法では、この「恐怖突入」を強く推奨します。

 亮が「恐怖突入」をして出場した復帰戦の成績はどうだったか、そして陽子と亮の関係は・・・それは本作品を実際にご覧になり確認してみてください。

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