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140. 「格付けチェック」を観て

[2021.01.08]

 1月1日、「芸能人格付けチェック!」(テレビ朝日系)を観ました。この番組は、一流の芸能人がチームを組み、味覚や音感などのクイズに挑戦。不正解になるごとにランクが下がっていき(座席や履物もだんだんとお粗末なものになってしまいます)、最低ランク「映す価値なし」になってしまうと、出演者が画面から消滅してしまうというものです。元日はこの番組がとても楽しみで、毎年必ず観ています。
 今回もGACKTさんは全問正解で、連勝記録をキープ。GACKTさんのずば抜けた才能には脱帽です。また、GACKTさんとコンビを組んだ倖田來未さんも、絶対に誤答ができないというプレッシャーの中、全問正解。お見事でした。一方、米沢牛、鹿肉、豚肉の3つの中から米沢牛をあてる問題では、「絶対アカン」食材の豚肉を選んでしまい、画面から消えてしまった出演者もいました。
 ところで、今回の格付けチェックで、特に印象に残ったチームがありました。高畑充希さんと北村匠海さんのペアです。高畑さんは3つの問題に挑戦し、いずれも不正解。最終問題の米沢牛をあてる問題では、「絶対アカン」の豚肉を選択し、北村さんとともに画面から消えることとなってしまいました。高畑さんは終始司会者の浜田雅功さんからいじられ続け、「ケンタッキー」というあだ名で呼ばれる事態にまでなりました(注:高畑さんが「ケンタッキーフライドチキン」のCMに出演していることから)。
 しかしながら、チームメイトの北村さんは一切高畑さんを責めることはしませんでした。高畑さんが誤答した際、北村さんは「(高畑さんが)楽しんでいるっぽいので、大丈夫です」と暖かい言葉でフォロー。高畑さんのミスの影響で「三流芸能人」のランクに落ち、木の箱の椅子とオンボロスリッパに変わってしまったことに対しても、「座り心地が素晴らしい。スリッパもしっくりする」と語っています。最後の米沢牛の問題で高畑さんが「絶対アカン」食材の豚肉を選び、最低ランクの「映す価値なし」になってしまった際には、北村さんは拍手をして深々とお辞儀をしながら画面から消滅しました。別のチームでは不正解をしたチームメイトを責め立てる出演者もいた中、北村さんの構えは立派だと感じました。
 これを観て、私は職業柄、アルコール依存症医療にてあるべき治療者の構えを思い出しました。アルコール医療では当事者が再飲酒(スリップ)をしてしまった場面によく遭遇します。再飲酒をした当事者に対し治療者が厳しい言葉で叱責するのは不適切な対応とされています。再飲酒は明らかに病気の症状ですから。長年依存症医療に携わってこられた芦沢健先生(北海道・千歳病院)は、「(当事者が飲んでしまったことについて)正直に話せたことを評価する」1)と論じておられます。よって、治療者はできる限り暖かい言葉で、「正直に話してもらってよかったです。再飲酒は病気の症状ですので自分を責める必要はありません。再出発により回復のチャンスは必ずありますから」などと伝えることが肝要かと感じております。
 「格付けチェック」での北村匠海さんの構えは我々治療者も学ぶべきものがあると感じたのでした。

【引用文献】
1) 芦沢健:依存症治療における森田療法の効用~治療者にとっても患者にとっても,とっても役に立つかもしれない.日本アルコール関連問題学会,18:2-5,2016.

 

 

 

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