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18. 脳トレは認知症予防になるか?

[2018.09.12]

 日本森田療法学会では例年「市民公開講座」が開催されます。この講座は、学会参加者以外の一般の方々も自由に受講することができるもので、参加費は無料です。先日法政大学で開かれた日本森田療法学会の「市民公開講座」では、東京慈恵会医科大学精神医学講座 主任教授の繁田雅弘先生が認知症をテーマに講演されました。繁田先生のご専門は老年期精神医学。認知症に関する一般者向けの書籍を多数出されており、2018年6月にはNHKテレビの「きょうの健康」にも出られました。かなりのご著名な先生ということもあり、会場内はほぼ満席でした。繁田先生のお話はユーモアたっぷりで、とても分かりやすく、明日からの臨床に活かせるような内容でした。

 さて、繁田先生のご講演で話題に上ったのが、「脳トレ」についてです。これは認知トレーニング、認知リハビリテーションとも呼ばれています。脳トレは、「脳を鍛えて活性化させる」ことを売りにしたもので、計算、パズル、漢字問題などがあります。書店へ行けば、脳トレ関連の書籍、ドリルがたくさん並んでいるのを目にすることでしょう。また約10年前には、某携帯ゲーム機のソフトにもなり、私も一時期ハマったものです。

 「脳トレが認知症予防になる!」と謳っている商品を時折見かけます。「脳トレ 認知症」で検索すれば、「脳トレは認知症予防に高い効果がある」などと書かれているサイトも見つかります。しかし、このことは、本当に科学的に実証されているのでしょうか??

 ――残念ながらその科学的根拠はないとのことです!極端な話、苦行のように脳トレばかりをしたとしても、認知症を遅らせたり予防したりする効果は期待できないということです。

 先述の繁田先生のご講演で、認知症と身体活動に関する研究論文が紹介されました(*)。それによりますと、身体を使った活動(ウォーキング、家事、家庭菜園など)を4つ以上する人のほうが何もしない人よりも認知症のリスクが低くなるとのことです。一日中家にこもって修行のように脳トレをするよりも、自分の好きなことを少しずついろいろやるほうが認知症になりにくいとも言えるでしょう。

 脳トレは、楽しみ程度にとどめておいたほうが無難なのかもしれません。

 

(*)Laura Jean Podewils, Eliseo Guallar, Lewis H. Kuller, et al. : Physical Activity, APOE Genotype, and Dementia Risk: Findings from the Cardiovascular Health Cognition Study. American Journal of Epidemiology, Volume 161, Issue 7, 1 April 2005, Pages 639–651.

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