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299. 東照公御遺訓

[2023.12.29]

 先日、大河ドラマ「どうする家康」が完結しました。最終回の結末、家康の臨終のシーンで、岡崎城時代を回想する場面が出ました。家臣たちの宴が行われている中、家康と正室の瀬名が夢について語り合い、そして空の向こうに現代の東京の姿が映し出され、エンディングを迎えました。とても感動的なラストだったと思います。

 ところで、最終回の冒頭で、「人の一生は重荷を負うて 遠き道をゆくが如し」という言葉が登場しました。これは、東照公御遺訓と呼ばれるものの一部です。ここで全文を記します。久能山東照宮HP1)から引用いたします。

人の一生は重荷を負て遠き道をゆくが如し いそぐべからず
不自由を常とおもへば不足なし
こころに望おこらば困窮したる時を思ひ出すべし
堪忍は無事長久の基 いかりは敵とおもへ
勝事ばかり知てまくる事をしらざれば害其身にいたる
おのれを責て人をせむるな
及ばざるは過たるよりまされり

 「徳川家康公ファンの歴史ブログ」2)に、分かりやすい意訳が掲載されていましたので、引用させていただきます。

人の一生は重荷を背負って遠い道を行くようなものだ。だから急ぐべきではない。
不自由を普通なのだと思えば、不満に思わずにすむ。
自分の心の中に欲が湧いてきたら、貧しさに苦しんでいた頃を思い出せ。
我慢することは、無事に長く安らかに生きるための基本である。怒りは敵と思え。
勝つことしか知らずに、負けることを知らない奴は、大事な時に失敗する。
物事の原因や責任は、自分を責めて他人を責めるな。
能力や財力など何事も、有り余るよりも足りないくらいの方が良い。

 もともとは、家康が書き残したものとされていましたが、最近の研究ではこれは偽作とする説が有力とされています。とはいえ、家康の苦難の生涯を象徴する言葉であり、家康の慎重な性格が表れた名言ではないかと思います。大天才の信長や秀吉だったら到底こんなことは書けないでしょう。
 この遺訓は、すなわち「うまくいっても慢心するな」「過去の失敗を反省し、リスクを考えて慎重に行動せよ」3)「失敗などは全て自分のせいだと思え、他人のせいにするな」ということであり、令和の時代を生きる我々にとっても大変有益なメッセージだと感じます。
 私も、東照公御遺訓を己へのいましめとして心にとめつつ、医療活動を続けていきたいと感じたのでした。

 今年も当ブログをお読みいただき、誠にありがとうございました。どうぞよいお年をお迎えください。

【引用サイト、文献】
1) https://www.toshogu.or.jp/about/goikun.php
2) https://www.ieyasu.blog/archives/6837
3) 南條幸弘:家康 その一言~精神科医がその心の軌跡を辿る~.公益財団法人静岡県文化財団,静岡,2015.

 

 

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