54. ひとりぼっちの神経質性格(?)
46話でご紹介した、カツヲ先生原作「ひとりぼっちの○○(まるまる)生活」1)が現在アニメ放映中です。極度の人見知りの主人公・一里ぼっち(ひとり ぼっち)が、幼馴染の友人・八原かい(やわら かい)との約束を果たすため、クラス全員と友達になろうと奮闘するストーリーです。アニメ版では、それぞれのキャラクターがかわいらしく描かれており、原作にはないエピソードも混ざっており、毎回楽しく拝見しております。
さて、今回はこの作品の主人公である、一里ぼっちの性格傾向について考察します。もしかすると、ぼっちは神経質性格を有しているかもしれない!と考えております。
まずは、何といっても人見知りです。人と話すことが苦手・・・どころか、人前で足がつったり、嘔吐したりしてしまいます。重度の人見知り(精神医学でいう「対人恐怖」)といってよいでしょう。また、かなり心配性で、行動を起こす前に頭で作戦を立て、シミュレーションする傾向にあります。人からの言動に影響されやすいところもあり、「あなたとは友達にはなれない!」などとちょっと言われただけで、「ガーン!」と落ち込んでしまいます。
ここまでは、神経質性格の「弱力性」(弱み)にあたります。それゆえ、小学生までは、友達と言える友達は、幼馴染の かい しかいませんでした。しかし、中学進学の際にかいから「クラス全員と友達にならない限り『絶交』」と言われてしまったことがきっかけで、友達作りをするようになります。その結果、ヤンキーみたいな風貌の砂尾なこ(すなお なこ)、いろいろ残念な副委員長 本庄アル(ほんしょう ある)、金髪碧眼の忍者オタク ソトカ・ラキターとお友達(ソトカとは、当初師匠―弟子の関係でしたが)となり、以後も次々と友達が増えていきます。これは、ぼっちの神経質性格の「強力性」(強み)が発揮されたためだと考えます。
まずは完全主義なところです。「クラス全員と友達になる」ことは、現実的には極めて難しいでしょう。しかし、ぼっちは数人と友達になったくらいでは、決して妥協はしません。「クラス全員と友達になる」というかいとの約束を果たすため、ぼっちは努力します。「絶対にかいと仲直りしたい!」という欲望が非常に強いのでしょう。実際、ぼっちの強みの一つである「妙な行動力」を活かし、少しずつ友達が増えていきます。友達は作らない主義の倉井佳子(くらい かこ)と友達になるために、ぼっちはいろいろ奮闘します。絶対あきらめない性格も彼女の強みです。
また、几帳面なところもあります。赤点を取ったなこのために、「爆笑ぼっち塾」を開校し、きっちりとしたノートを作ってあげています(しかも、「ぼっち塾」の校歌まで作成してしまうほどのこだわりようです)。
そして、ぼっちには、裏表がなく、純粋で、優しい性格を有します。これだけ友達が増えていったのは、周囲の人物が彼女のこれらの性格に魅力を感じたからだと思います。先ほどの弱力性で掲げた「心配性」も、場合によっては強みになります。心配するということは、それだけ相手を気遣うことができるということにもなりますし、慎重に物事を進めるので、ミスや失言が少ないということにもなります(ただ、天然なところがあり、ぼっちにとっては何気ない発言で、なこが怒ってしまったエピソードはありましたが)。
15話(「ヤマノススメ」の主人公は神経質キャラ?)でも説明しましたが、神経質性格は決して悪いものではありません。これを上手く活かすことで、立派な仕事を成し遂げる方々も数多いです(江戸幕府を開いた徳川家康も、神経質性格であったという話もあります2))。ぼっちも、己の神経質性格や中学時代の友達作りの体験を大いに活用し、将来的には有能な女性になるのだろうなあと思わず空想してしまいます。
TVアニメ「ひとりぼっちの○○生活」公式サイト
http://hitoribocchi.jp/
【文献】
1) カツヲ:ひとりぼっちの○○生活 1~5巻(以後続刊).KADOKAWA, 東京, 2014-2019.
2) 南條幸弘、鈴木一記:家康 その一言~精神科医がその心の軌跡を辿る~.公益財団法人 静岡県文化財団, 静岡, 2015.