177. ワクチン接種後の血管迷走神経反射
現在も月2~3回、那須塩原市の新型コロナワクチン集団接種会場に出向き、接種を担当しています。最近では若い方の来場が増え、中学生、高校生の被接種者も多くなりました。中には、親子で接種を受けられるケースもよく見かけます。
さて、先日の集団接種で、会場の看護スタッフから「具合悪い人がいるので診察してほしい」との依頼を受けました。心配性の私は、「もしかするとアナフィラキシーショックか!?」と頭をよぎりました。救護所のベッドには男子のお子さんが横になっていました。接種後休憩していたところ、頭がくらくらした感じになったとのこと。若干の血圧低下や発汗はあったものの、酸素飽和度は99~100%で下がっていませんし、喘鳴や発疹もありません。意識はあり、会話は可能でした。これはアナフィラキシーショックではなく、血管迷走神経反射だろうと判断し、そのまま横になって休むようお伝えしました。幸いにも20分程度で回復したため、帰宅OKと伝えました。
血管迷走神経反射は、強い痛みやストレス、緊張を感じたことにより、一時的に副交感神経が活発となり、血圧低下、徐脈、冷や汗、嘔気、嘔吐などの症状が出現するものです。脳への血流が減少することで、失神(意識消失)に至るケースもあります。横になって休むことで回復することが多く、予後は良好とされています。しかし失神により転倒し、頭部外傷に至るリスクもありますので要注意です。なお血管迷走神経反射は、ワクチン接種の他に、採血、歯科治療の場面でも生じることがあります。また、学校の朝礼で長時間立っていたお子さんが具合を悪くするケースも血管迷走神経反射によるものです。
コロナワクチン接種後の血管迷走神経反射はアナフィラキシーなどのアレルギー反応ではありませんので、通常は2回目の接種は可能とされています。ただし、1回目の接種で血管迷走神経反射により体調を崩された方、これまで採血などで気分を悪くされた方の場合は、横になっての接種のほうが望ましいといえます。接種の予診の際にその旨を伝えていただければ、ベッドに案内されるなど配慮してくれると思います。ぜひご相談を。