189. 189
先日那須塩原市から当院に「児童虐待防止推進ポスター」が送られてきました。児童虐待防止の広報・啓発等のため、ポスターを掲示してほしいとのこと。添付のポスターには「189(いちはやく) 『だれか』じゃなくて『あなた』から」と大きく描かれています。
「189」とは、児童相談所虐待対応ダイヤルのこと。児童虐待ではないかという状況を見かけた、などという場合に、通告するための電話番号です。この「189」を少しでも多くの方に周知することができればと感じ、早速当院の入り口に掲示いたしました。
私は約20年前に、虐待に関する通告をしたことがあります。当時私は研修医で、学生時代から住み続けた古いアパートに住んでいました。隣の部屋には、若夫婦と小さいお子さんが住んでいました。時折その部屋から、虐待ではないかと疑われる音や声が聴こえてきたのです(詳細については、ここでは割愛します。かなり刺激的な記事になってしまいますので)。これは誰に相談すればよいかかなり悩みました。そんな中、当時児童相談所の所長をされていたK先生にお会いする機会がありました。その先生に例の件について相談したところ、「これは児童相談所に連絡したほうがいいよ」とのコメントを頂きました。当時専用ダイヤル「189」はありませんでしたので、児童相談所の番号を電話帳で調べて電話しました。児童相談所の担当者に、隣の部屋で虐待を疑う行為がなされていることについて詳細に説明しました。私の名前は伝えず匿名にしました。その数か月後、若夫婦とお子さんはいなくなっていました。児童相談所の介入でそのお子さんが保護されたのか、それとも児童相談所の介入がないまま3人が引っ越ししていなくなったのか、不明です。とにかく、現在そのお子さんが元気に過ごされているだろうかと気になっております。
現在は、児童虐待かもと感じた際に相談できるダイヤルとして、「189」という専用の番号が設定されています。その番号に電話すると、住まいの地域の児童相談所につながります。通話は無料です。通告や相談は匿名でもOKで、通告者のことなどの秘匿情報は厳守されるとのこと。
虐待によるお子さんへの影響は深刻なものです。それにより、そのお子さんが様々な精神障害を発症することも珍しくありません。また78話で記載しました通り、虐待(マルトリートメント)によりお子さんの脳が変形し、脳機能にも影響を及ぼしてしまういう研究もあります。そして日ごろからの虐待により、最悪なケースでは悲惨な事故にまで発展することも、決して忘れてはなりません。
「189」に関するCMの通り、虐待を見かけても誰かが代わりに連絡してくれるだろう、では手遅れになる恐れがあります。虐待を発見もしくは疑われる場合は、お子さんを救うためにもぜひとも「189」に電話を!
【余談】今回の記事を作成する際にインターネットで下調べしたところ、「189」というタイトルの映画が上映されていることを発見しました。児童虐待に関する作品のようです。ぜひとも観てみたいと感じましたが、栃木県内では小山市の劇場のみしか観られないとのことで残念です(2021/12/10現在)。ぜひとも那須塩原市のシネマでも上映してほしいです。
【参考資料】
厚生労働省:児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dial_189.html
札幌市:児童虐待防止のために「189(いちはやく)」
映画「189」公式サイト
https://189movie.jp/