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29. 森田療法センター

[2018.11.30]

 私は現在、だいたい月1回のペースで、森田療法の勉強会(会場は東京都渋谷区)に出席しています。先日、その勉強会の特別企画として、東京都狛江市の「森田療法センター」の見学会が開催されることとなり、私も参加させていただきました。
(注:院内は写真撮影禁止とのことで、このページでは施設内の写真は掲載しておりません。なお、「森田療法センター」公式ウェブサイトに、施設の写真が豊富に載せられていますので、ぜひご覧ください)

 「森田療法センター」は、慈恵医大第三病院の構内にあり、数少ない「入院森田療法」が実施されている施設です。当日の見学会では、「絶対臥褥」(後述)をするための畳部屋をはじめ、病棟内の作業スペース(犬が2匹います。クリスマス会直前とのことで、患者さんがその準備をされていました。出し物の劇で使用する大道具もありました)、「森田の庭」と呼ばれる花壇や池(患者さんが植物などの作業を行なう庭)、鳩小屋(患者さんが鳩の世話をしており、時々放鳩ピクニックも行なわれているそうです)、畑(そこで収穫されたものを患者さんが調理することもあるとのこと)などを見学することができ、大変勉強になりました。ご多忙な中、案内してくださった先生方に御礼申し上げます。

 森田療法は現在では採算性などの問題から「外来」で実施されることが多くなりましたが、基本的には「入院」だといわれています。以下に、「入院森田療法」の概要を示します。

 

第1期:絶対臥褥期

 入院が開始されると、まずは原則1週間、食事、トイレ、洗面(歯磨き含む)以外は布団にずっと寝ていなくてはなりません。これが「絶対臥褥」です。トイレや洗面の際は一時的に部屋の外に出られますが他者との会話はNGです。当然、携帯電話やスマホ、ポータブルオーディオなどの電子機器類は使用禁止。気を紛らわせるための独り言、放歌、運動なども不可です。入浴もできません。
 中には「なんだ、寝るだけだったら楽じゃないか」と思われる方もいらっしゃると思います。しかし、2-3日何もせずずっと寝ていると、次第に退屈感が強くなり、とても辛くなるといわれています。ずっと寝ているくらいだったら、何か活動したい!という気持ちがわいてくる、という話をよく聞きます。
 なお、臥褥の期間は、患者さんのコンディションにより、1週間よりも短くなることも長くなることもあるそうです。また、通常畳部屋で臥褥が行なわれますが、ケースによってはベッドで施行されることもあるとのことです。

 

第2期:軽作業期

 絶対臥褥を終えると、一人での軽い作業を行なうこととなります。「森田療法センター」では、木彫りが行なわれているそうです。これは、はがきサイズの木の板を彫刻刀で削り、絵などの作品を作り上げる作業です。なお、この時期より日記指導が始まります。

 

第3期:作業期

 己の「生の欲望」を作業などに発揮させていく時期です。「森田療法センター」では、植物グループと動物グループに分かれ、集団で植物や動物の世話をする作業をします。ある程度「作業期」を経験するようになると、グループのリーダーになり、リーダーを中心に作業内容を決めていくことになります。

 

第4期:社会復帰期

 社会復帰への準備の時期です。外出や外泊をします。

 

 今回の見学会で再認識したことは、森田療法では、一切症状をターゲットにすることはしないということです。症状を抱えながらも、「生の欲望」というエネルギーを作業などに発揮させることで、いつしか患者さんの症状は軽減されていくものなのです。それこそが、他の精神療法にはない、森田療法の醍醐味なのではないかと思っています。

 

「東京慈恵会医科大学 森田療法センター」 https://morita-jikei.jp/

 

 

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