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どくとるあるぱかのブログ

127. 心理教育の重要性(2020.10.16更新)

 私が毎月購読しているマンガ雑誌「本当にあった笑える話」(略称「ほんわら」)に、「まさか私がパニック障害!?」という作品が連載されています。この作品について当院ブログに登場するのは2回目です。前回(98話)は、パニック症(パニック障害)の症状に悩む主人公がなかなか精神科を受診せず、読者の私がとてももどかしい気分でいることを書きました。

 その主人公が、ほんわら2020年7月号で、遂に精神科クリニックを受診します1)

 精神科について怖いイメージを持っていた主人公。しかしクリニックを訪れると、全くそんな印象はなく、安心します。いよいよ診察。精神科医A曰く「お疲れなんでしょう。安定剤を出しましょう」と。主人公が薬について恐怖に思っていることを医師に伝えると、その医師は、50分1000円のカウンセリングを勧めます。主人公はよく考えたいと返事。そのクリニックに置いてある書籍をみて、自分はパニック障害なのではと気付きます。その書籍で紹介されていた精神科医Bの医療機関へ。しかし精神科医Bもいきなり薬を出そうとします。同じく主人公が薬に対する恐怖心を伝えると、医師は50分1万円のカウンセリングを勧めたのでした。(注:精神科医A,Bの呼称は私が便宜上使用したものです)

 薬が使えないからと、あっさりカウンセラーに丸投げする精神科医A,B。この2人の医師の態度を見て、私は非常にがっかりしたのでした。あたかも精神科医は投薬治療しかできないという誤解を読者に与えてしまうのではと感じました。

 一方当院では、パニック症の患者さんに対し、必ず「森田療法的な心理教育」を施行します(注)。詳細は16話に記載していますが、こちらでも簡単に触れておきます。

 パニック症は、動悸、冷や汗、息切れなどの「パニック発作」が急激に出現し、「死んでしまったら」という死の恐怖も伴うものです。外出先などで同じ発作が出現したら、という不安から、日常で必要な行動を回避するようになり、その結果不安にとらわれる、だからこそますます必要な行動から避けてしまう、という悪循環を形成します。これを森田療法では「精神交互作用」と言います。まずはこのことについて説明します。また、発作の性質についてもきちんとレクチャーします。パニック発作は自律神経の緊張によるもので、ピークは数分程度。その後は緩やかに自然に回復するものです。ここで私は「夕立」の例を出して説明します(16話参照)。更には、この発作でぶっ倒れるとか、コントロールを失うとか、ましてや死に至ることは決してないことを保証します。
 パニック症の患者さんは、外に出ると発作で死んでしまうのではないか、などという誤った考え方(「認知」という言葉も使います)から、外出を避けてしまうことが多いです。この歪んだ考え方を修正するのに、心理教育は役に立ちます。確かにパニック症には薬物療法がよく効く傾向にあります。しかしながら、薬には歪んだ考え方を修正する力はありません。中には、医者からパニック発作の本態について全く説明されず、漫然と薬だけ投与されて、症状が全く改善されないまま何年も経過したパニック症の患者さんもいらっしゃいます。

 このような遷延化したパニック症の患者さんに対して「心理教育」が役立ったケースをご紹介いたします。この患者さんもパニック発作に対する予期不安のため、長年にわたり日常生活に支障が生じていました。「森田療法的心理教育」として、発作の性質や対処法などを説明しましたところ、ご本人が非常に納得されました。そして、不安を抱えたまま、今まで回避していた場所へ次々と足を運ぶようになり、次第にパニック発作へのとらわれから解放され、非常に早期に回復されました。短時間の「心理教育」でも、回復のきっかけになることもよくあるのです。

 森田正馬先生の生家(高知県香南市、10話参照)の近くに、頌徳碑(11話)があります。そこに、「上医は術を売り、下医は薬を売る」というお言葉があります(12話)。これからも私は、「術を売る」医療ができるよう精進していきたいと存じます。

(注)当院の心理教育は、診察室の診療の枠内で行なっています。保険診療の範囲内で施行しておりますので、診療代は、他の精神科クリニックさんとそんなにも変わらないと思います。なお、必要に応じて薬物療法も併用します。

【文献】
1) 妻咲たち(原作)、あらた真琴(漫画):まさか、私がパニック障害!?.本当にあった笑える話 2020年7月号,ぶんか社.

 

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