268. 巡査3人の飲酒運転をめぐる一考察
先日、栃木、茨城、群馬の県警に所属する男性巡査3人が酒を飲んだあとにそれぞれ車を運転し、各県警から処分を受けたという報道がありました(3人はすでに依願退職しているとのこと)。
新聞の記事1)によると、巡査3人は、今年1月某日にプライベートで集まり、午後11時から翌日午前1時半ごろまで栃木県某所の飲食店で飲酒。その後カラオケ店へ移動して酔いを覚まそうと休憩し、午前5時半前に各自の車で運転を開始したそうです。そのうち1人(茨城県警の巡査)が、栃木県内で自動速度違反取り締まり装置に検知され、栃木県警に出頭して飲酒運転が判明。その際に栃木、群馬両県警の巡査2人も一緒だったことが分かったとのことです。
なお、巡査の一人は、「酒は少量で、十分に休んだから運転して大丈夫だと思った」と語っていたそうです。
しかしながら、アルコールが体内から完全に抜けるまでには、思ったよりも時間がかかるものです。純アルコール20gに相当するお酒(ビール500ml、日本酒1合、ワイン200ml、ウイスキー60ml、チューハイ(7%)350ml、焼酎(25%)100mlがそれに相当します)を飲んだ場合に、完全にアルコールが体内から抜けるまでに、4時間かかると言われます。ただしこれは、飲酒しても顔が赤くなりにくい成人男性のケースであり、女性や高齢者、そして飲酒して顔が赤くなりやすい男性の場合には、5時間かかるとされています2)。例えば、ビール500ml、日本酒1合、焼酎(25%)100mlを合わせて飲んだ場合は、純アルコールは約60gに相当しますので、体内から完全にアルコールが抜けるまで、約12時間(女性や高齢者、顔が赤くなりやすい体質の方は約15時間)もかかることになります。
今回の3人のケースでは、飲食店に滞在したのは約2時間半です。本人は「酒は少量だ」と主張していますが、ビール500mlを2時間半かけてちびちび飲んだことはとても考えられません。おそらく3人は談笑しながら様々な種類の酒を飲んでいたのではないかと推測されます。その後の酔いを覚ますための休憩はたったの4時間です。これでは完全に体内からアルコールは抜けません。そのような状態で、「十分に休んだから大丈夫」と過信して車の運転を始めてしまったのでしょう。
警察庁のサイト3)によると、飲酒運転の死亡事故率は、飲酒なしの7.1倍にもなるとのことです。近年では飲酒運転に対する厳罰化がされているものの、それでも飲酒運転による悲惨な事故は後を絶ちません。
飲み会などに参加する場合は、運転代行やタクシーなどを利用すべきであり、アルコールが完全に抜けるまで(飲酒量によりますが、おそらくは半日から1日はかかります)、車の運転は絶対に避けなければなりません。
【引用記事/参考サイト】
1) 下野新聞 令和5年5月17日。
2) 特定非営利活動法人ASK アルコールが体から抜ける時間
https://www.ask.or.jp/article/8502
3) 警察庁 みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/info.html