48. 「生活の発見」に文章を載せていただいた話
森田療法の自助グループ「生活の発見会」の機関誌「生活の発見」平成31年4月号に、私の文章「森田療法に救われた私が診療所を開業するまで」を載せていただきました。
「生活の発見会」(以下「発見会」)は、神経症に悩む人が集い、森田療法の理論を学んでいく自助グループです。月1回、機関誌「生活の発見」(通称「発見誌」)が発刊されます(これは会員のみに配布されるもので、一般の方には販売されておりません)。発見誌には、森田療法の専門家による講演記録(最近ではバックナンバーの再録が多いです)、神経症当事者による体験談、森田療法の理論の解説コーナーなど、森田療法の学習に役に立つ記事が盛りだくさんです。
その機関誌に、不定期で「こんにちは、協力医です」のコーナーが掲載されます。発見会の協力医が執筆を担当するもので、自己プロフィールや医療機関の紹介、そしてその医師が感ずる森田療法の魅力などが盛り込まれています。協力医のリストは発見会HPで見ることができ、私もその一員として名前を掲載させていただいております。
前置きが長くなりましたけれども、当院開業直前の昨年10月、発見会の方から「こんにちは、協力医です」を執筆してほしいとのご依頼をいただきました。もちろん私は快諾いたしました。
原稿には、以下の内容を適宜盛り込んでほしいとのことでした。
(1)森田療法との出会い、(2)最近の受診者の傾向、(3)森田療法の魅力、(4)会員の方々へのメッセージ、(5)医院の概要。
その中で私が特に強調して書きたいと思ったのは、(1)の森田療法との出会いです。
当院HPの「院長紹介」で記載した通り、私は学生時代、強迫観念や強迫行為(ガス栓、戸締りなどの確認強迫)、そして赤面恐怖などにひどく悩みました。抑うつ的にもなった時期もありました。その状況の中、精神科の講義で偶然「森田療法」を知りました。その講義の日にちを今でもしっかりと覚えています。1999年(平成11年)4月20日です。「もしかすると、森田で自分の悩みを解決できるかもしれない!」と思い、森田療法の本をむさぼるように読みました。次第に自分が強迫に陥ったからくりを理解するようになり、そしていつしかその悩みから脱出することができました。医師免許取得後、精神医学を選んだのも、もちろん森田療法がきっかけです。
精神科医としての道を歩むことになりましたけれども、決して順風満帆にいったわけではありませんでした。度々スランプに陥りましたし、人生上の危機も経験いたしました(具体的な内容については割愛します)。このようなしんどい状況の中、森田療法の基礎「気分はそのままに、なすべきことをなす」を遵守し、何とか医療活動を続けてきました。医師になってからも、幾たびも森田に助けられたのです。このエピソードも書き加えることにいたしました。
結果的には、一風変わった「こんにちは、協力医です」の原稿が出来上がりました。一見すると、医者らしくない文章になったかもしれません。しかし、私は精神科医であるとともに、神経症当事者でもあります。むしろ一神経症者の体験談として読んでいただければ・・・その思いから、この原稿を提出いたしました。
そしてこの文章を載せていただいたのが、発見誌の平成31年4月号です。これは「平成」最後の号です。更には、私が森田療法に出会った平成11年4月から、ちょうど20年にあたります。この絶好なタイミングに、「こんにちは、協力医です」を担当させていただき、大変ありがたく存じております。
発見誌の原稿執筆という貴重な機会を賜りました「発見会」の皆様に、この場をお借りして、心から御礼申し上げます。