218. 「絶対にあきらめない」銚子電鉄
先日YouTubeで、銚子電鉄に関する動画1)を観ました。乗車レポートの他、銚子電鉄についての簡単な紹介がされているもので、キャラクターの毒舌が面白く、最後まで一気に視聴してしまいました。
銚子電鉄は千葉県銚子市を走る、全長6.4kmのローカル私鉄です。この動画で紹介されている通り、銚子電鉄は大変な資金難に見舞われており、その社長が「電車屋なのに自転車操業」というセリフを発するほどの状況です。明日の電車を走らせるために、お菓子やグッズ、そしてレールの切れ端、線路の石など、換金できるものは何でも売ることに定評があると、この動画のキャラクターは述べています1)。
銚子電鉄で売られている商品の中で最も有名なのが、ぬれ煎餅です。実際に銚子電鉄での収入の7割がこのぬれ煎餅2)とのことで、実際に帝国データバンクでは銚子電鉄は「鉄道会社」ではなく「米菓製造業」と登録されています3)。
銚子電鉄のぬれ煎餅に関して、大変有名なエピソードがあります。「奇跡のぬれ煎餅」のお話です。銚子電鉄は利用者減に伴い、行政からの補助金で何とか運行を維持してきました。いつ廃線になるかという不安の中、平成18年、当時の社長に横領が発覚してしまいます。それにより行政からの補助金が打ち切られてしまいました。倒産の危機です。しかも、国土交通省の監査にて、老朽化した設備の改善・修理の命令が出され、3か月以内にこれらの改修をしなければ運行停止。それには多額の費用が必要でした。その上、車両の法定検査も1か月後に迫っており、それも費用が掛かります。この時の銚子電鉄は社員の給料さえも全額払えない状況で、通帳残高もわずか。銀行からの融資も社長の横領のため望めません。このままでは資金ショートしてしまいます。そんな中とある社員が、銚子電鉄の副業として製造・販売していたぬれ煎餅に目をつけ、インターネットでぬれ煎餅の購入を呼びかけました。「ぬれ煎餅を買ってください。電車修理代を稼がなくちゃいけないんです」。このメッセージにお客さんが共感し、膨大な数のぬれ煎餅の注文が入りました。この爆発的な売り上げにより、車両の法定検査、老朽化施設の改修をクリアし、銚子電鉄は生き残ることができました4)。
とはいえ、その後の東日本大震災や昨今のコロナ禍などにより銚子電鉄の経営は苦しい状況が続いています。この状況を改善するために、銚子電鉄は様々な商品を販売するようになりました。どれも、銚子電鉄の芳しくない経営状況をコンセプトにした、ユーモアあふれる商品です。駄菓子で著名なうまい棒のパロディ版である「まずい棒」(銚子電鉄の経営状況が「まずい」ことから)、「鯖威張(さばいば)るカレー」(銚子電鉄の生き残り(サバイバル)をかけていることから)、和風ケーキ「おとうさんのぼうし」(倒産防止から)など。また、ビックリマンシールのパロディ版「銚電マンシール」は、「金欠鬼vs貧乏神」がコンセプトで(どちらが勝ってもお金がないことには変わりありません)、ガチャガチャで販売されています(ガチャガチャのことを銚子電鉄では「ガタガタ」と呼んでいます。経営が「ガタガタ」であることから)3)。最近ではきゃりーぱみゅぱみゅさんの曲「もんだいガール」と「経営状況に『問題がある』」銚子電鉄とのコラボが実現し、「問題だらけの“もんだいがある”きゃりー電車」の運行を始めました5)(余談ですが、「問題だらけ」というと「浦河べてるの家」(13話)の「べてるはいつも問題だらけ」を思い出してしまいます)。
これだけ自虐ネタたっぷりの商品やイベントを展開している銚子電鉄のモットーは「絶対にあきらめない」3)とのこと。これは銚子電鉄の始発駅・銚子駅の副駅名にもなっています。これからも、絶対にあきらめずに電車の運行が続けられるよう、銚子電鉄を応援いたします。
【参考文献・サイト・動画】
1) にっこーけん氏の動画「【電車なのに自転車操業】電車も動かす製菓会社:銚子電鉄に乗ってみた」https://youtu.be/TQv_iG40b-Y (下ネタ表現が含まれる箇所がありますので、ご視聴の際にはご注意ください)
2) 銚子電鉄「まずい棒」公式サイト https://choden-mazuibou.com/
3) 寺井広樹:廃線寸前!銚子電鉄 “超極貧”赤字鉄道の底力.交通新聞社,東京,2021.
4) 奇跡のぬれ煎餅~小さな煎餅が鉄道を救った~(ぬれ煎餅商品に封入されていた説明書き)
5) 銚子電鉄ホームページより https://www.choshi-dentetsu.jp/event/3486/
【おまけ:銚子電鉄応援のために買ってみた】
鯖威張るカレー、バナナ車掌、ぬれ煎餅
まずい棒 かる~いチーズ味、チキンカレー味
(味は結構おいしいです)
電車に乗ってほしいも(干し芋)