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174. 要注意!リチウムと解熱鎮痛剤の併用!

[2021.09.03]

 リチウム(商品名「リーマス」)は双極性障害(双極症)の治療で良く用いられている薬です。治療効果が高い薬とされていますけれども、一方で過量服薬や脱水傾向などにより容易に中毒症状が出現する恐れがあります。これを「リチウム中毒」と言います。主な症状として、手指の振戦、下痢・嘔吐などがあり、更には意識障害、けいれんを起こし、最悪な場合死に至ることもあります。万一リチウム中毒になった場合、全身管理の可能な総合病院での治療が必要となり、重症のケースでは血液透析が導入されることもあります。
 上記で述べたリチウムの特性から、リチウムの血中濃度が治療範囲内に入っていること(中毒域に達していないこと)を確認するため、通常3カ月に1回(服用開始時や投与量を増量した場合には1週間に1回)、リチウムの血中濃度測定の採血をすべきとされています。
 リチウムを服用されている患者さんが特に注意すべきなのは、解熱鎮痛剤として用いる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs・「エヌセイズ」などと呼びます)との併用です。両薬剤の併用により、リチウムの血中濃度が上昇し、リチウム中毒になる恐れがあります。実際に、リチウムを服用している方が、疼痛や発熱に対しNSAIDsを使用したところ、リチウム中毒を起こしたという症例報告が数多くあります。NSAIDsの一例として、ロキソプロフェン(ロキソニン)、ジクロフェナク(ボルタレン)、インドメタシン(インダシン)、アスピリン(バファリン)などがあります。なお、アセトアミノフェン(カロナール)は厳密にはNSAIDsには属しませんが、添付文書にはリチウムとの併用注意と明記されているため、同様に注意が必要です。
 最近では新型コロナワクチンの副反応(発熱、頭痛など)に備える目的で、解熱鎮痛剤の売り上げが伸びているという話をよく聞きます。ただし、リチウム服用中の方がワクチンの副反応対策で安易に解熱鎮痛剤を服用してしまうと、リチウム中毒に至ることも懸念されます。十分にお気を付けください。

(注)リチウムを飲まれている方も、新型コロナワクチンを接種すること自体は全く問題ないとされています。ご安心ください。

【参考文献】
・寺尾岳:双極性障害の診かたと治しかた.星和書店,東京,2019.
・渡邊衡一郎:気分安定薬.樋口輝彦,市川宏伸,神庭重信ら(編):今日の精神疾患治療指針第2版;749-752,医学書院,東京,2016.

 

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