メニュー

289. 学会のシンポジスト in 岡山

[2023.10.20]

 先日、「アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会」(於・岡山市)のシンポジウムにてシンポジストとして発表させていただきました。
 シンポジウムは朝9時から。当日朝は緊張して落ち着かず、ホテルを早めにチェックアウトして、開始1時間前に会場の会議室に到着してしまいました。学会スタッフのほかには誰もおらず、私が一番乗りでした。実をいうと学会のシンポジストはこれが初めて。発表途中で緊張のあまりフリーズしないよう、発表内容を何度も念入りに確認いたしました。そのうち、発表される先生方やフロアの方々が次々に入室され、開始時刻には会場の座席の7割程度が埋まった印象でした。
 このシンポジウムのタイトルは「アルコール使用障害と日本の精神療法」。日本生まれの精神療法として代表的なものに、内観療法と森田療法があります。ここでは、内観療法と森田療法のそれぞれ2人の演者が、依存症治療にいかにその療法を応用しているかを発表するもので、もちろん私は森田療法の立場として発表いたしました。
 まずは、内観療法をアルコール医療に用いられているお二人の先生のご発表を拝聴しました。内観療法は、過去の認知を修正するのに役に立つこと(認知を修正するところが、認知行動療法と共通点があること)、森田療法と同じように「症状不問」(197話)の構えをとることなどを知ることができ、勉強になりました。また、内観療法は、患者さんが屏風に仕切られた静かな部屋で「(家族に)してもらったこと、して返したこと、迷惑をかけたこと」をずっと想起し続けるイメージがあります(これを「集中内観」というそうです)けれども、最近では外来でも行われているのだと知り、ここも森田療法と共通するところがあると感じました。
 そしていよいよ私の発表。発表のスライドの大部分は、先月の札幌の講演会(285話)でお話しした内容のうち、「依存症に対する森田療法の応用」の部分を流用しました。しかし、今回のシンポジウムでの持ち時間はたったの12分。札幌の講演会の内容をそのままお話ししてしまうと、3分以上もオーバーしてしまうことに気づきました。このため、必要性の低いスライドをカットし、スライドの中身の表記も一部削るなどして、何とか12分に収まるよう発表内容の修正を行ないました。
 発表では、まずは森田療法の基本的な考え方を概説し、続いてアルコール医療にいかに森田療法を用いるか私の考えを述べ、そして症例報告をする流れでお話いたしました。

 途中で、森田療法の理解を少しでも深めて頂ければと思い、このスライドの場面でついアドリブを入れてしまいました。
 
「私は現在、人前での発表で非常に緊張しています。しかし森田流に言わせていただきますと、緊張は自然なものとされています。このため緊張を排除することはせず、緊張のまま人前で話しなさいというのが森田療法の考え方です。・・・ですので、頑張ります!」

フロアからは笑い声が聞こえてきました。また、「ひとくち森田」(288話)の話題も出しました。

しかし時間の都合上やむをえず、キーワードを3つのみとし、あとは当院のブログをご覧くださいと案内いたしました。「どくとるあるぱか」と検索すれば見られる旨申し上げましたが、欲を言えばスライドにQRコードをつければよかったというのが反省点です。アドリブを入れた影響もあり、約30秒オーバーして発表終了しました。
 発表を無事に終え、ホッとしたところで、東京の大学病院で准教授をされている先生による森田療法のご発表を拝聴。飲酒量低減薬・ナルメフェン(商品名「セリンクロ」)を用いてもなかなか飲酒量が減らせない患者さんに対し、森田療法を導入したところ、うまく減酒ができ、更にはナルメフェンをやめてからも減酒を続けられたという症例報告は、とてもインパクトのあるものでした。
 その後、私を含む演者4人が壇上に上がり、総合討論に。時折発言が求められる場面があり、私は冷や汗をかきながらなんとかお答えいたしました。そして座長の先生が締めくくりのお言葉を述べられ、シンポジウム終了。
 座長の先生やフロアの方から、「スライドが分かりやすかった」などとお褒めのお言葉を頂きました。誠にありがとうございます。今回、発表の機会をくださいました座長の先生方に御礼申し上げます。

 

【おまけ】
 今回の学会には2日間にわたり参加し、様々な先生方のご発表やご講演を拝聴いたしました。この学会への参加は13年ぶり(2010年の神戸大会以来)で、13年前はアルコール依存症が中心の内容だったのが、今回はアルコールだけでなく、薬物依存、ギャンブル症、ゲーム行動症、そして窃盗症など幅が大きく広がった内容となっており、それだけ依存症の臨床が多岐にわたっていることをあらためて知りました。そのなかで、森山成彬(帚木蓬生)先生(9話)のギャンブル症に関するご講演は、政府やマスコミを痛烈に批判されている内容もあり、たいへんインパクトがありました。また、窃盗症の理解と治療のご講演では、店に入るまでは盗もうという気がなくても、いざ入店すると衝動的に窃盗してしまい、その後後悔してしまうのだという病態を知り、もっと勉強しなければならない分野だと痛感しました(その直後に書籍コーナーで関連書籍を購入しました)。一方で、参加者が非常に多く満席になってしまい立見が出てしまうくらいのシンポジウムもありました。拝聴してみたいシンポジウムがあり会場へ行ってみたものの、室内が非常に混雑しており、結果入室を断念したものもありました。それが心残りでした。

 

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME