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334. アディクトを待ちながら

[2024.08.23]

 先日、新宿のK’s cinemaにて、映画「アディクトを待ちながら」を鑑賞しました。

 この作品は、共にギャンブル依存症者の家族である、監督のナカムラサヤカさんとプロデューサーの田中紀子さんがタッグを組んだ長編映画であり、主演は、2016年に覚せい剤と大麻使用の容疑で逮捕され、現在は依存症の啓発活動を続けている、俳優の高知東生(たかち・のぼる)さん。また、橋爪遼さん、杉田あきひろさん、塚本堅一さんといった、薬物事件で逮捕歴のある方々が登場し、下田大気さんなど、実際の依存症者やその家族が多数出演しています。この映画が上映開始となった直後は、チケットが即完売となり、観たいと思いながらもなかなかチケットの入手が難しい状況でしたが、先日のお盆休み期間にシネマの空席状況を確認したところ、幸いにも空席があり、チケットを入手することができました。
 ストーリーは以下の通りです。アルコール、ギャンブル、薬物、ゲーム、買い物といった依存症者で構成されるゴスペルグループがコンサートを開こうとしていました。そのメンバーの中には、2年前に薬物事件で逮捕された、大物ミュージシャンの大和遼(高知東生さん)も入っていました。大和はこのコンサートがカムバックの場となるということもあり、会場には大和のファンが集まっていました。しかしながら、コンサート当日の開始時間になっても、大和は現れません。大和は逃げたのか?それとも薬物の再使用(スリップ)か?・・・
 この作品には、様々な依存症者やその家族だけでなく依存症からの回復に懐疑的な立場の人物も登場します。依存症者の言葉や、依存症に対する誤解や偏見の言葉などが、実に生々しく、あたかもノンフィクションのドキュメンタリー作品を観ているかのような感覚になりました。あと特筆すべき点が2点あります。まず、ラストシーンは、台本がない状態での即興芝居だったこと。そして、高知東生さん演じる大和遼の台詞がほぼアドリブだったことです。ラストの場面で大和が語った台詞は、薬物依存症の当事者である高知さんの思いをそのままに吐露した内容に他ならないものであり、たいへん印象深いものでした(台詞の内容はネタバレ防止のためここでは書けません)。
 依存症は誤解や偏見の多い病気といわれています。有名人が飲酒問題や薬物事件を起こすと、いっせいにマスコミがバッシングをし、あたかもその人に対し「社会の落伍者」のように扱い、精神論でこき落とすのが実情です。残念ながら医療現場でも、「依存症者は意志が弱い」という誤解が少なくありません。一方でこの映画作品には、仲間と支えあいながら回復していく依存症の当事者がたくさん登場し、皆さんはとてもいきいきしています。しかもリアルに依存症からの回復を目指している俳優さんらも多く出演しています。「アディクトを待ちながら」は、依存症に対する誤解や偏見を払しょくしてくれるような、貴重な作品と思っております。

*「アディクトを待ちながら」は、8月23日(この記事の公開日)から、栃木県宇都宮市のヒカリ座(東武宇都宮駅近く)で上映開始されます!

「アディクトを待ちながら」公式ホームページ
https://www.addict-movie.com/

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