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120. 不眠に対する森田療法的生活指導 前篇

[2020.08.28]

 先日、某製薬会社主催のWeb講演会に出席しました。先月その会社で新しい不眠症治療薬が発売されたこともあり、不眠症に関係する内容のご講演でした。睡眠不足によって、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクが高まるという研究結果が紹介。従来不眠の治療として使われてきたベンゾジアゼピン系薬剤(37話など)は、依存性などのリスクがあることからできる限り短期間の使用にとどめるべきこと、それに対し最近発売された不眠症治療薬は安全性が高いというお話もありました。そして、生活の質を高めるためにも、不眠の治療はしっかりすべきだという内容でした。

 ところで、臨床の現場で、よく神経生理性不眠症(神経症性不眠症などともいわれる)の患者さんに出会います。これは、何らかのストレスなどがきっかけで眠れなく感じ、不眠への恐怖感が増すと、夜には何とかして眠ろうとあがいてしまい、かえって目がさえてしまう、ということが特徴です。不眠への恐怖にとらわれることから、森田療法の文献では「不眠恐怖症」という用語もよく用いられます。このようなケースについては薬物療法を用いることもよくありますが、あくまでも補助手段です。むしろ、生活指導も並行して施行すべきとされています。
 当院では、このような不眠の患者さんに対し、森田療法をベースとした生活指導を行なっております。

(注)ここに掲げる不眠に対する生活指導は、「神経生理性不眠症」の患者さんに対して施行するものです。一方、不眠の中には、精神疾患(うつ病、統合失調症など)や器質的疾患などがベースとなったものがあります。この場合は、もともとの疾患の治療をしっかり行う必要があります。特にうつ病や統合失調症の急性期の方に対しては、森田療法的な生活指導は安易に行なってはなりません。

 まずは、精神交互作用(注意と感覚の悪循環。森田療法のページ参照)を提示いたします。心配事などで眠れなくなることは、誰にもあることです。「まあ眠れないこともたまにはあるさ」とスルーする方も多いのですけれども、一方で几帳面で神経質傾向のある方の場合、「眠れないとは大変なことだ」と感じてしまいます。すると、「今晩は眠れるだろうか」などと心配になってしまいます。夜になると、寝るための様々な努力をしようとします。それによりますます緊張してしまい、かえって眠れなく感じます。そうなると、「眠れないから日中も体がだるくなる」と身体にも注意が集中するようになり、「眠れなくなることで生活習慣病のリスクが高くなるとお偉い先生から聞いた。これは大変だ」などと身体面の心配もするようになります。不眠に対する恐怖に視野狭窄されてしまい、ますます夜になると寝よう寝ようとあがいてしまう、その結果より一層眠れなく感じる・・・という悪循環となってしまいます。
 治療のポイントは、上記の悪循環の打破です。そのために様々な生活指導をしていきます。詳細は次回にゆずります。

 

 

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