22. ドリフターズ診療
私が小さいころ、楽しみにしていたテレビ番組がありました。
土曜夜8時、TBS系で放送されていた、伝説のお笑い番組「8時だョ!全員集合!」です。
番組の前半は、ザ・ドリフターズの5人によるコント(この番組はなんと生放送でした!)。そのあと、歌のコーナー、短いコントなどへと番組は進行します。
そして、エンディングでは、出演者全員が舞台に上がり、エンディングテーマを歌います。途中で、加藤茶さんが子供たちに向け、「風呂入れよ!」「宿題やれよ!」「歯磨けよ!」などと言葉をかけ、そして「また来週~!」で、締めくくりました。
ところで、「ドリフターズ診療」という言葉があります。これは、精神科の診察場面で、「ご飯食べられますか?」「夜眠れますか?」「お通じありますか?」と患者さんに問い、そして、「同じ薬をだしますね~、また来月~!」と診療を打ち切ることを言います。上記の加藤さんの掛け声に似ていることから、とある精神科医は「ドリフターズ診療」と名付けました。確かに、1,2分程度の短い時間で診察を切り上げることができ、ある意味効率の良い診察と言えるでしょう。
しかし、これらの質問の中で、患者さんが「実は・・・眠れないんです」と話し出したら、どうなるでしょうか?おそらく治療者は「じゃあ薬を足しますね~!また来月~!」と打ち切るでしょう。これが繰り返されると、多剤多量処方を作り上げてしまう恐れがあります。
このように、患者さんの表面的な症状を聴くだけで安易に薬を足し算のように増やしていくのは、単なる「薬の売人」でしょう。12話に記載したように、単に薬を売るだけでなく「術」を売る医療の重要性を感じております。