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60. 「60点主義」の是非

[2019.07.05]

 今回は第60話。「60」にちなんで、「60点主義」がテーマです。

 この言葉は、「完璧主義を貫くと疲れる。とりあえず60点できればOK!」などという意味で使われます。なぜ60点なのか。おそらく、たいていの試験の合格ラインが60点なので、それが由来なのではないかと思います。その他に、「60%主義」「6割主義」という言葉も用いられることもあります。

 確かに、100%完全に物事をこなすことは無理です。完全主義を貫こうとすると、いつかは疲弊してしまいます。このようなタイプの人に対し「60点主義」を掲げ、無理のない行動を助言することはある意味有用だといえます。

 しかしながら、この「60点主義」という言葉、私にはしっくりこないのです。

 神経質の人は、完全欲が強い傾向にあります(まさしく私はこのタイプです!)。完全欲とは、完全に物事を成し遂げたい!という欲望のことで、これ自体は自然なものであり、けっして悪いものではありません。完全欲が強いからこそ、少しでも減点されることが許されない。このようなタイプの方には、40点も減点する「60点主義」は、まったく受け入れられないのではないかと思います。また、「60%頑張らなければならないのか」「60%できなければダメではないか」などという「かくあるべし」を助長する要因にもなりえます。更には「60」の数字にとらわれて、「どのくらい力を抜けば60%なのか」などと考えてしまい、頭でっかちになってしまう恐れもあります。良かれと思った助言が、かえって悪影響になることもありうるということです。

  ちなみに、「生活の発見会」の名誉会長で、森田療法の理論の集団学習運動を推進された、故・長谷川洋三先生は次のように述べられています1)

 「一〇〇パーセント」はあり得ない
「完全」は観念の産物であって、現実には存在しない。したがって、完全、不完全を問題にすることは現実的ではない。私たちにできることは、自分なりに精一杯やることだけである。

 なるほど。己の完全欲を発揮すべく、「自分なりに精一杯やる」。こちらのお言葉こそ、的を射たアドバイスではないかと思います。

 

【引用文献】

1) 長谷川洋三:森田式精神健康法. 三笠書房, 東京, 2005.

 

 

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