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69. 昼寝の効用

[2019.09.06]

 前回ご紹介した井原裕先生「効率高速仕事術」1)には、昼寝の大切さについて取り上げられています。井原先生は、獨協医科大学埼玉医療センターにて「薬に頼らない精神科」医療を実践されており、睡眠不足による抑うつ傾向の患者さんに対し「1日7~8時間の睡眠」「週50時間の睡眠」を指導されています2)
 睡眠時間確保の必要性について日常診療で強く説かれている井原先生ご自身も、夜に7時間弱の睡眠をとり、それに加えて、「15ないし30分程度の昼寝」をされているとのこと。大学病院の教授職というとてもご多忙な立場でありながらも、「昼寝は絶対に欠かせない」と述べらています。疲労でぼんやりしているときは、思考力が低下している、仕事の要領が悪くなる恐れがある。このため、作業中の脳の覚醒度を最高レベルにまで上げるため「昼寝中心主義」を主張する、と井原先生のご著書に書かれています1)

 ここで、昼寝の効能についての研究論文3)を紹介します。デュッセルドルフ大学のLahlらによる研究です。睡眠は記憶の保持に有益な効果を与えるとする研究結果は数多くあります。Lahlらは、きわめて短時間の昼寝でもその効果はあるのか実験を行ないました。被検者は18人の大学生。30個の単語のリストが渡され、2分間でできるだけ多く覚えてもらいます。1時間後に覚えた単語を言うテストがあるのですが、それまでの間、(1)起きたまま(コンピュータゲーム)、(2)6分程度の超短時間の昼寝、(3)35分程度のやや長い昼寝をしてもらいました。
 実験の結果、覚えた単語数は有意に、(1)<(2)<(3)でした。すなわち、6分程度の極めて短い昼寝でも十分に記憶が促進されていることを示唆する研究結果でした。

 昼寝というと怠けていると思われがちですが、実際には決してそうではないことが言えます。むしろ仕事のパフォーマンスを上げる目的で、有用なのです。私も最近では診療の日でも積極的に昼寝をするようにしています。

 

【引用文献】

1) 井原裕:精神科医が実践する デジタルに頼らない 効率高速仕事術.ディスカバー・トゥエンティワン, 東京,2019.

2) 井原裕:うつの常識、実は非常識.ディスカバー・トゥエンティワン,東京,2016.

3) Lahl, O., Wispel, C., Willigens, B., et al.:An ultra short episode of sleep is sufficient to promote declarative memory performance. J. Sleep Res.(2008)17,3-10.

 

 

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