73. ハラハラドキドキ プレゼンテーション!
「今度人前で発表するんです。自分は人前に出ると緊張して身体が震える性格で困っています。緊張しなくなる薬を出してほしいです」と医療機関を受診するケースは、よくあることです。医師によっては、「わかった!緊張しなくなる薬を出してやるからな!」といい、薬が処方されることもあるでしょう。その薬はたいてい、ベンゾジアゼピン薬剤(以下「ベンゾ」)。その王道は、デパス(一般名「エチゾラム」)です。巷では、ベンゾは、副作用が少なく安全で、しかも切れ味が良いと言われています。しかしながら、ベンゾには「依存性」があり、続けて服用してしまうとやめにくくなってしまう恐れもあります。また「脱抑制」といって、気持ちが非常に大きくなり、考えられない行動を起こすリスクもあります。高齢者の場合には転倒、せん妄(意識障害の一種)なども心配です。このような理由で、私はベンゾの処方は極めて慎重にしています(ベンゾのリスクについては、37話、38話、39話にまとめてあります)。
そもそも、人前で緊張したり、あがったりすることは、自然なことであり、まったく病的ではありません。「人前でよい発表をしたい!」「立派に発表を成し遂げたい!」という気持ち(欲望)があるからこそ、緊張するものです。プロ野球の名選手だった王貞治さんも現役時代、バッターボックスに入る際には常に緊張して身震いしていたそうで、「逆に震えなくなったら、バットを置く(引退する)ときだ」とおっしゃっていたそうです。己の緊張や震えを我々はコントロールすることはできません。「緊張しないように・・・」などと不可能なことにエネルギーを注ぐより、立派な発表ができるように、発表の練習を何度もするとか、どうしても発表の際にフリーズするのが心配であれば「読み原稿」を作成するとかしたほうが、よっぽど建設的です。
実をいうと私もかなりの「あがり症」。これまで学会発表を何度か経験しておりますけれども、発表直前は動悸がし、発表中も冷や汗をかきながらプレゼンテーションしています。それでもドキドキしながらもなんとか乗り越えてきました。
10月4日~6日、浜松市で「第37回日本森田療法学会」が開催されます。私も5日(土)の一般演題で発表します。演題番号はなんと1-1でトップバッターです。本番は緊張しながら、ハラハラドキドキで臨みたいと思います。