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38. ベンゾジアゼピン系薬のリスク 中篇

[2019.02.01]

 日常の診療で、「『安定剤』をやめようと試みたが、具合が悪くなってしまい、結局服用を続けざるを得なかった」というお話をよく耳にします。これは、ベンゾジアゼピン系薬の依存性によるものと考えられます。
 「アルコール依存症の基礎知識」のページで、アルコールには精神的依存身体的依存があることを書きましたが、ベンゾジアゼピン系薬にも同様の依存があります。

 精神的依存とは、その薬剤を服用しなくなった場合、不安、いらいら、不眠など精神的に不安定となり、気持ちの安定化を図るために再びその薬を服用しなければならない状況に陥ることです。
 一方で身体的依存とは、その薬剤が身体から抜けると、発汗、手足のしびれ、頭痛、震え、動悸、けいれん発作などの身体症状が生じてしまい、その症状を抑えるために再び薬を服用しなければならない状況になってしまう依存のことです。

 ベンゾジアゼピン系薬の心配な点として、保険で適応されている処方量、用法を守っているのにかかわらず、依存が形成されてしまう恐れがあることです。このような依存を「常用量依存」といいます。文献によると、2週間~4か月で依存が形成されるとのことです。

 前回の記事で、海外ではこれらの薬剤の処方期間が厳しく規制されている旨を書きましたが、その根拠は、上記で述べたように、比較的短い期間で依存に陥る恐れがあるためなのです。一方わが国では、ようやく平成30年の診療報酬改定で、ベンゾジアゼピン系薬を12か月以上連続同一用法・用量処方されている場合に、処方量・処方箋料が減算されることになりましたが、まだまだ海外に比べれば規制が甘いとしか言わざるを得ません。

 なお、巷では「デパス(一般名:エチゾラム)は弱い(=作用時間が短い)薬だし、様々な診療科で出されているお薬だから、安全だ」といわれていますが、これは誤解です。作用時間が短いベンゾジアゼピン系薬ほど依存性が高いため、まったく安全とは言えません。

 

【引用文献】 
小田陽彦「診療情報改定における向精神薬(抗不安薬・睡眠薬)処方の在り方」うつ病治療の新たなストラテジー Vol.8 No.2 先端医学社より

 

 

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