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39. ベンゾジアゼピン系薬のリスク 後篇

[2019.02.08]

 今回は、ベンゾジアゼピン系薬の様々なリスクについて説明いたします。

・前向性健忘
 服薬した後に行なったことを、あとから思い出せないという場合があります。これを「前向性健忘」といいます。作用時間が短いベンゾジアゼピンほど生じやすいと言われます。

・ふらつき、転倒
 ベンゾジアゼピン系薬の中には「筋弛緩作用」というものがあります。筋肉をほぐしてくれる作用のことです。デパス(一般名:エチゾラム)は、この働きが強く、肩こりや筋緊張性頭痛にもよく用いられています。しかし、筋肉をほぐす作用があるゆえ、歩いていてふらついて転んでしまう恐れがあります。特にご高齢の方は転んで骨折する危険もあります。

・逆説反応・奇異反応
 ベンゾジアゼピン系薬を服用することで、不安をほぐしたり、眠りやすくしたりすることが期待できます。しかし、その効果とは反対に、かえって不安を強めたり、眠れなくなったりすることが知られています。中には、気持ちが非常に大きくなって、ブレーキが利かなくなって、普段なら考えられないような行動を起こす場合もあります(これを「脱抑制」といいます)。認知症をもつ方がこれらの薬を服用してしまうと、「せん妄」という意識障害を起こす恐れがあります。

・おまけに認知症発症のリスクの可能性も?
 ベンゾジアゼピン系薬を高齢者が服用することで、認知症発症のリスクが増大するという疫学研究があります。しかし一方で、その薬剤と認知症発症との明らかな関連性はないとする研究結果もあり、現在のところ意見が分かれています。

 

  ベンゾジアゼピン系薬のリスクについて、3回に分けて説明いたしました。わが国では残念ながら、この薬剤は安全だという誤解が多いのが事実です。こちらをお読みになり、少しでもこれらの薬剤の怖さについてご理解いただければ幸いです。

 【引用文献】
吉村匡史、木下利彦「抗不安・睡眠薬による精神症状」 今日の精神疾患治療指針第2版 医学書院より
Sophie Billioti de Gage, Yola Moride, Thierry Ducruet, et al. Benzodiazepine use and risk of Alzheimer’s disease: case-control study. BMJ 2014 ; 349

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