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100. 残念ながら百点満点

[2020.04.10]

 当院の診察室のテーブルには、「日めくり まいにち べてる」1)という日めくりカレンダーが置いてあります。これは一昨年、北海道浦河町「浦河べてるの家」13話)のイベント、べてるまつり(14話)に参加した際に購入したものです。べてるの言葉が1日に1メッセージ掲載されています。べてるの書籍でおなじみの、すずきゆうこさんのイラストにも癒されます。

 その日めくりカレンダーの6日には「残念ながら百点満点」というメッセージが載せられています。

 青年に「自分の点数をつけるとしたら何点ですか」と聞くと「10点ですね。せめて80点は取りたいですね」と言った。私(註:向谷地生良先生)は言った。「とても残念なことですが、不十分で、不満足なままも、もうすでに100点満点なんですよ。何か人生の目標を失わせたようで申し訳ないですね」。すると彼は、「え、もう100点ですか。気が抜けた感じですね」と安堵の表情で笑った。

 「ものごとを完璧に!」という認知のゆがみがあり、それゆえいつも低い自己評価しか得られない20代後半の青年のエピソードです2)。その青年に対し、向谷地生良先生(浦河べてるの家理事)は、「100点満点」という絶対的肯定のコメントをされています。あえて「残念なことですが」と前置きされる、向谷地先生のセンスには脱帽です。

 この青年と同じように、自己評価が低く、時には自己否定を繰り返し、苦労する人は数多くいます。実は私もその傾向にあります。「自分はダメ人間なんじゃないか」と思うこともしばしばあります。特に大学生時代、私が森田療法と出会う前は、その考えを顕著に持っていました。自らは周りの学生と比べて劣っているのではないかという劣等感を強く持っていました。このダメな自分を変えようと、自己啓発本を読んだり、ポジティブな考え方を持とうと試みたりしたことが何度もありました。しかしながら、到底うまくいくはずがありません。それどころか、劣等感や自己否定感などを払拭できない自分が嫌になってしまい、より落ち込んでしまうのでした。もし誰かが当時の私に対し「自分の点数をつけるとしたら何点ですか」と質問したならば、私は先述の青年と同じように「10点」と答えたかもしれません。

 ちょうど、生活の発見会の会員誌「生活の発見」2020年2月号に「『自己否定をやめよう』と言われても」3)という記事を見つけました。私と同じような体験が書かれています。自己否定がやめられない著者が、一生懸命に自己否定しないように努力しようと、いろいろな本を読む、自己啓発セミナーを受講する、などやってこられたそうです。しかしその結果、自己否定をやめられない自分を否が応でも思い知らされて、自己嫌悪と劣等感の底なし沼に沈み込んでしまったとのことでした。自己否定をやめられない人には、「自己否定をやめよう」ではなく、「自己否定をする自分を責めなくていい」。こういうことが大切では、とその著者は述べられています。まさしくその通りだと思います。

 自己否定しても、「ダメ人間」でも、「10点」でも良いのではないでしょうか。自己否定感や劣等感を持ったまま、自分なりにベストを尽くして、行動をしていけば、それでよいのではないでしょうか。その構えがこそが、まさしく「100点満点」なのではないかと考えます。

 ところで、私が最近ハマっている癒しキャラに、「コウペンちゃん」があります。「おしゃべりコウペンちゃん」というグッズの宣伝動画4)の一場面を紹介します(ページの下のほうに動画を貼り付けました)。仕事から帰宅した女性が、ぐったりとベッドに横になった際、「コウペンちゃん」が次のように語ります。

 「おうちに着いただけで、満点なんだよ」

 このシーンを観て、思わず感動してしまいました。

 

 おかげさまで、当院のブログは今回で100話に達しました。当院開業から約半年前、こちらのホームページを立ち上げた際に、制作サイトにブログ機能があることに気づき、興味本位でこのブログを開始しました。いつの間にか週1回更新で定着するようになりました。時にはネタがなくなり困り果てて、やめてしまおうかと思ったことが何度もありました。しかし、次第に読んでくださる方が増え、時には「いつもブログ読んでいます」とのありがたいお言葉を頂戴することもあり、簡単にやめることができなくなりました。そしてコツコツと更新を続けていくうちに、いつの間にか100話にまで達することができました。
 誠にありがとうございます。

 これからも「どくとるあるぱかのブログ」をどうぞよろしくお願いいたします。

 

【引用文献など】
1) 向谷地生良(文),鈴木裕子(イラスト):日めくりまいにちべてる.いのちのことば社フォレストブックス,東京,2018.
2) 向谷地生良:増補改訂 「べてるの家」から吹く風.いのちのことば社,東京,2018.
3) 藤木正直:「自己否定をやめよう」と言われても.生活の発見2020年2月号
4) 「おしゃべりコウペンちゃん PV」 
https://www.youtube.com/watch?v=_UjRCuLKLb4

 

 

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