メニュー

14. べてるまつりに行ってきた

[2018.08.15]

8月4日。北海道浦河町の浦河町総合文化会館。こちらが「べてるまつり」の会場です。

 今回のテーマは「『安心して絶望できる人生』あははは~」

 午前の部の目玉は、平昌五輪カーリング女子日本代表・吉田知那美選手の特別講演会でした(吉田選手といえば、韓国戦でカメラの前で「にっこにっこにー!」というアクションをされた、あの方です)。吉田選手は、自身の座右の銘である「安心して絶望できる人生」について語りました。

 吉田選手はソチ五輪に出場し5位入賞。しかしその直後に所属チームから戦力外通告を受けてしまいます。そんな「絶望」の状況の中、北見市常呂町の実家で「安心して絶望できる人生」の絵葉書を見つけました。


(ステージ上のスクリーンを撮影したもの)

 この葉書はもともと、友人「あずちゃん」が、吉田選手のお父様に贈ったものとのこと。「あずちゃん」は当時吉田家全体がギクシャクしている様子を心配し、その絵葉書をプレゼントしたそうです。穴に落ちているのは、べてるの家理事の向谷地生良先生

 吉田選手はその言葉に出会うことがきっかけで、「絶望」という状況を受け入れることができたそうです。また「絶望になっても生きていけるんだ!」「絶望は必死に生きていくためのエネルギー」とも語っていました。「生きるエネルギー」という言葉を聴いて、森田正馬先生の「生の欲望」とそっくりだなぁ・・・と私はつい感じたのでした。

 続いて、「べてるの家35周年」のシンポジウム。べてるの歴史についてのお話でした。その途中、アルコール依存症の男性とその奥様が登場。数十年前、そのご夫婦が浦河赤十字病院に突然来院したエピソードが紹介されました。夫は酒臭く、顔面にアオタンを何個も作り(奥様にボコボコに殴られたらしい)、一方妻は全身けいれんで、お互いよろめきながら受診したそうです。これを向谷地生良先生(北海道医療大学教授、べてるの家理事)や川村敏明先生(当時・浦河赤十字病院の精神科医、現・浦河ひがし町診療所院長)がユーモラスに語るのです。会場は大爆笑です。精神疾患にまつわる深刻なエピソードも、べてるでは笑いに変えてしまうのですね。

 昼休みです。昼食は「べてるめんめん」。麺はもちろん自家製麺です。

 文化会館から歩いて数分、カフェぶらぶらへ。べてるメンバーが運営するカフェで、地元の方もよく利用されているそうです。

 「幻聴さんデー」を食べました。

ビデオゲームの「パッ●マン」に似た形のビスケットは「幻聴さん」。べてるでは、幻聴という精神症状を、「幻聴さん」とキャラクター化します。

 午後の部。「べてる一年の報告」。朝ミーティングや昆布作業、当事者研究などのべてるの活動がステージ上で再現。「ミスターべてる」早坂潔さんが吉田選手に活動の様子を紹介する方式で進行されました。まるで我々参加者も吉田選手と一緒にべてるの様子を見学しているかのようで、とても工夫されているコーナーでした。それにしても、浦河では、グループホームなどの住まい、作業の場所、診療所など横のつながりがかなり強い。当事者が安心して社会で生活できるように、かなりネットワークが密になっていることが分かります。

 そして、恒例イベントの「幻覚&妄想大会」!ここではメンバーの様々な病的体験が面白おかしく披露され、年間グランプリが発表されます。先ほどのご夫婦は「ベストファミリー賞」を受賞。あと、「当事者研究大賞」を受賞した女性の方のエピソードも面白かった。この方が一人暮らしをすることになり、不動産屋さんからペットの有無を訊かれると、本人は「ユニコーンを飼っています!」と正直に話したとのこと!思わず笑ってしまいました。そして、グランプリの発表。電波の幻覚に苦しみながらもべてるの活動を続け、電波についての当事者研究を重ねているNさんがグランプリを獲得しました。電波の幻覚はなかなか難治で、治療に難渋するケースも多くあります。そんな中、Nさんは電波の状況、強さなどを日ごろ記録に残し、夕方には電波が強まる、女性スタッフとお茶会すると電波は弱まるなど、傾向と対策について熱心に研究されているとのことでした。

 それにしても、べてるのメンバーは本当に元気がいい。浦河では、自分の障がいや苦労を公開し、仲間と共有し、お互いに認め合うようなネットワークが密に構築されているとのことです。このような環境であるからこそ、障がいで苦労しながらも、「自分らしい」生活ができているのではないかと勝手に思っております。障がいから回復するには、薬だけではなく「人とのつながり」も重要であることを学んだのでした。

 あと、ゲストの吉田選手がしっかりとべてるのメンバーになじんでおり、見事に「べてる化」されていることに驚きました(向谷地先生いわく、べてるから帰った後に副作用が出るとのこと。それがカーリング競技にどう影響するか、ちょっと心配ですが)。吉田選手は今年9月、カーリングのワールドカップに出場されるとのことです。吉田選手の今後ますますのご活躍をいのります。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME