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72. 神経質性格と両面観

[2019.09.27]

 「神経質」というと、あたかもネガティブなイメージが付きまといます。とあるサイトには嫌われる性格の一つとして挙げられていますし、ネットオークションでも「神経質な方はご遠慮下さい」という表記をよく見かけます。

 実をいうと私は、かなりの神経質人間。昔は、この性格が嫌で嫌で仕方ありませんでした。些細なことを気にしやすく、心配性で、落ち込みやすく、くよくよしやすい(今でもこの傾向は変わっていません)。両親からは「神経質はつまらない性格だから、おおらかになりなさい!」などと散々言われました。何とかして神経質な性格をやめたいと思っていましたけれども、うまくいくはずがありません。ちょっとした落ち込みを何とかしてコントロールしようとしましたが、到底無理なこと。感情をコントロールできない自分がますます嫌になり、さらに落ち込むの悪循環でした。私が学生の頃にベストセラーになった、リチャード・カールソン氏の「小さいことにくよくよするな!―しょせん、すべては小さなこと」を買って読んでみましたが、全く解決できませんでした(余談ですが、青木薫久先生1)はこの著書に対し、「なぜ『世の中のことは、すべて小さなこと』であるかの解説を彼はしていません」と批判されています)

 更には強迫観念や強迫行為がひどくなり、どん底な状況になりました。そのような渦中で偶然に森田療法の存在を知ったのです(詳しくは、49話50話をご参照いただければと思います)。

 森田療法を学んで目から鱗だったものの一つに、「両面観」70話71話参照)がありました。神経質性格という一見するとマイナスにしか見えないものも、見方によってはプラスにもなるということです。心配性で気にしやすいということは、それだけ細かいことにも気づきやすいということ。その対策をしっかりすることで、万一の際のリスクを最小限にすることができます。新幹線は昭和39年に東京―新大阪間が開業して半世紀以上経ちましたが、一度も大きな事故は起きていません。おそらくこの新幹線の安全システムは心配性の積み重ねでできているものと私は考えています。大事故を起こした上にそれを隠ぺいしようとする某国の鉄道とは大違いです。落ち込みやすいのは、それだけ自己内省が強いということで、自分のことを見直して、成長するチャンスが多いということでもあります。落ち込まないズボラな人には、このような成長のチャンスはなかなかありません。そして神経質傾向のある人は、華やかさに欠けて地味な印象ですが、「石橋をたたいて渡る」ように物事に慎重ですので、大きな損害を被るリスクが少ない傾向にあります。

 私は、この「両面観」を知り、自分は神経質のままでいいんだ、そして神経質性格のプラスの面を活かしていこう、と思ったのです。

 

【引用文献】

1) 青木薫久:《新装版》なんでも気になる心配性をなおす本 よくわかる森田療法・森田理論.KKベストセラーズ, 東京,1999.

 

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