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79. 「ゲームは1日1時間!」

[2019.11.15]

 私は小学生時代、ファミリーコンピュータ(通称「ファミコン」)でよく遊びました。スーパーマリオブラザーズやドラゴンクエストなどの名作をはじめ、数々のソフトをプレイしたものです。私は典型的な「ゲームっ子」でした。

 その当時、高橋名人(本名:高橋利幸さん)がテレビや雑誌などのメディアによく登場していました。高橋名人といえば、16連射(1秒間に16回ボタンを押すこと)。テレビで高橋名人のプレイ映像を拝見し、その巧みな技に小学生の私はたいへん驚愕したものです。

 高橋名人の名言中の名言は、「ゲームは1日1時間!」ではないでしょうか。これは、「ゲームだけ夢中にならず、いろいろなことを経験しよう」という意味を込めて放った言葉1)とのことです。

 

 この高橋名人のお言葉、実は日常臨床において私はよく使っております。

 77話で述べました通り、当院には小学生や中学生の患者さんも来院されます。「朝起きられない」「落ち着かない」とご両親が心配されて受診されるケースもあります。これを伺い、うつ状態なのかな、ADHDの多動なのかな・・・じゃあお薬を・・・と一瞬頭をよぎりそうですが・・・ちょっと待った!
 その前に、就寝時間と起床時間を訊ねてみます。すると、寝る時間は日付が変わった午前の1時や2時で、起きるのが7時というお子様もいらっしゃいます。これではまったく睡眠時間が足りません。井原裕先生(68話69話参照)のご著書2)によると、お子様の睡眠時間の目安は、小学校低学年で10時間以上、小学校高学年で9時間以上、中学生で8時間以上、高校生で7時間以上とのことです。そこで、夜は何して過ごすかと訊いてみたところ、「テレビゲーム」とのお答え。ゲームを3~4時間もしてしまい、つい夜更かししてしまうとのことです。

 そこで高橋名人の名言「ゲームは1日1時間!」の出番です。ゲームは1時間に制限して、睡眠時間を確保するよう指導します。実際に、夜更かしをやめて睡眠をしっかりとるようになってから、「ずいぶん身体が楽になった」「落ち着いてきた」というお子様やご両親のお話を伺います。

 ただ、「ゲームは1日1時間!」がここ最近のゲーム事情でなかなか難しい場合があります。約30年前のファミコン世代では、ゲームを1時間くらいすれば、飽きがくるものでした。しかしながら、最近のゲームには飽きさせない数々の工夫が盛り込まれています。しかも、私が小さいころには考えられなかった、インターネット対戦やネット仲間との協力プレイも現代では当たり前です。仲間に気を遣ってしまい、なかなかゲーム時間の制限ができないとのお話も聞きます。

 とはいえ、高橋名人のおっしゃる通り、ゲームだけに固執せず、様々なことを体験することが、お子様の発達過程において必要なのではないでしょうか。

 

【引用文献】

1) 高橋名人― wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%A9%8B%E5%90%8D%E4%BA%BA 
(2019年11月14日閲覧)

2) 井原裕:「子どもの発達障害」に薬はいらない. 青春出版社, 東京, 2018.

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