83. あるぱかパニック奮闘記
当院開業の直後である昨年(2018年)12月ごろより、私は動悸や胸部違和感を自覚するようになりました。診察している最中にも動悸などが出現し、また夜間には動悸や冷や汗で目が覚めてしまうこともありました。起床した時にも息切れがひどく、「今にも死んでしまうのでは」という死の恐怖にも襲われました。
これではまずいと思い、市内の総合病院を受診。血液検査、胸部レントゲン、心電図の検査を施行した結果、まったく異常所見はないとのことでした。そのドクターから「何も異常なくて良かったですね~!」とコメントをいただきましたけれども、「じゃあ、この症状の原因は何なんだよ!」という思いが募り釈然としませんでした。
しかし、検査で異常なしということは、今すぐ治療しなければならない身体的疾患は全くないということ。おそらくは、パニック発作の一種なのだろう、ということに気づきました。そして今はびくびくハラハラしながら通常の生活を続けるしかないという結論に至りました。時々動悸などの違和感を覚えながらも診療は続けました。ブログ16話の知識も大いに活用しました。
ここで一つ心配なことがありました。2月の「心の健康セミナーin広島」の参加申し込みをしてしまったことです。しかも新幹線の切符も購入してしまっていました。動悸や息切れがひどいので、いっそのこと広島行きを取りやめようかとも思いました。そんな時、森田正馬先生のお怒りの姿が私の脳裏に浮かびました。「出張を取りやめるとは何事か!広島へ行き給え!」と森田先生からお叱りをいただいた感じがしました。結局、おっかなびっくりで広島行きを決行しました。恐怖突入!です。
出発する前は、「途中で症状が出たら」とか「広島でダウンしたらどうしよう」などという予期不安がありました。しかし、東京駅でN700系の「のぞみ号」を見たとき、急にわくわく感が出てきました(私の鉄道好きが幸いしたかもしれません)。車内では私好みの音楽を聴きながら読書をして過ごし、無事広島に到着。「心の健康セミナー」では、伊丹仁朗先生のご講演を拝聴いたしました(40話、41話)。セミナーの後は、お好み焼き店へ。かなりの人気店で、30分以上並んだうえ、広島風のお好み焼きを堪能できました。翌日は平和記念公園にも訪れました(42話)。広島滞在中は何度か動悸がしましたけれども、広島来訪の目的は果たせました(「目的本位」、31話)。
プライベートや学会などで遠出する際、スケジュールの都合で夜行バスを使わざるを得ない出来事もありました。夜行バスでは閉鎖された暗い車内で長時間過ごさなければなりません。その時発作が出たらどうしよう、という不安がありました。しかし実際乗車すると、日ごろの疲れのためか車内で熟睡し、気が付いたら目的地に到着していました(7月の大阪来訪(65話)や11月の福井の学会(78話)では夜行バスを利用しました)。
8月の「しおや湧水の里ウォーク」では長時間の歩行で心機能がおかしくなるのではと懸念しました(医学的には、パニック症の方が長時間運動して、心機能などが悪化することはありえません。医師の私も理屈ではわかっているつもりでいましたが、つい心配してしまいました)。しかしびくびくハラハラで挑戦し、結果前回を大幅に上回るタイムで40.8kmのコースを完歩しました(66話、67話)。
現在でも、時折動悸や発汗、息切れが生じることがあります。特に低気圧通過時や睡眠不足で疲れがたまっている際には症状で辛くなる場合があります。カフェインの入った飲料も動悸などが誘発されるため飲めなくなり、ドライブ休憩時の「一杯のコーヒー」という楽しみもできなくなりました。しかしながら、症状とつきあいつつ、日々生活しております。