メニュー

391. ギャンブル依存症における自死のリスク

[2025.09.26]

 この前の日曜日、「ギャンブル依存症対策日英国際カンファレンスin東京」に出席しました。テーマは「過熱するギャンブル業界―日英の自死遺族が見てきたもの」。カンファレンスでは、息子がギャンブル依存症に罹患し自死した英国の夫妻が登壇しました。英国でも、オンラインギャンブルの広がりにより若年層の依存症者が増えていること、ギャンブル依存症により不幸にも自ら命を絶ってしまう若者もいること、そしてギャンブル依存症は本人の弱さのせいだと誤解されてしまうことなどを聞き、わが国と同じ状況であることを理解しました。なおその夫妻は、民間団体「Gambling with Lives」を設立し、ギャンブル依存症自死遺族の支援やギャンブルの健康問題についての啓発を行っているそうです。
 精神医学において自死のリスクのある疾患といえば、うつ病や双極症(かつての「躁うつ病」)、統合失調症などが知られていますが、もちろん依存症も該当します。ギャンブル依存症による自死について、カンファレンスのシンポジウムで講演された松本俊彦先生(国立精神・神経医療研究センター 精神科医)は、積み重なる借金やヤミ金からの厳しい取り立て、周囲から見放され孤立することなどの社会的状況に加え、衝動性亢進や心理的視野狭窄(死のことしか考えられなくなる)といった、依存症そのものの影響によるものがあることを述べられていました。
 残念なことにギャンブル依存症は、本人の意志の弱さのせいで自己責任だとか、「楽しさを求めてギャンブルをしているくせに死にたくなるのはあり得ない」などと誤解されてしまうことも少なくありません。ギャンブル依存症はれっきとした脳の病気です。「死」について考えてしまうのも症状の一つです。このカンファレンスにおいて、登壇者の一人である田中紀子さん(ギャンブル依存症問題を考える会 代表)が、「ギャンブル依存症の当事者で『死』について考えたことがあるという人は手を挙げてください」と呼びかけたところ、多くの方々が手を挙げられました。今回このカンファレンスに参加し、ギャンブルは依存症や自死のリスクがあることに加え、依存症は適切な治療や自助グループにつながることで回復可能であることを啓発していかなければと改めて感じたのでした。

Gambling with Lives公式ページ(英語です)
https://www.gamblingwithlives.org/

ギャンブル依存症問題を考える会 自死遺族会
https://www.scga.jp/izoku/

(注)ギャンブル依存症は、正式な精神医学用語では「ギャンブル行動症」と称します。しかしこちらのページでは、マスコミ等で最も普遍している「ギャンブル依存症」を用いました。

 

【参考】ギャンブル依存症と自死について調べていたところ、下記サイトを見つけました。BBCの記事です(英語)。英国・ブリストル大学の研究者らは、ギャンブル依存症の若者は、非ギャンブラーと比較して4倍の自殺企図のリスクがあるという研究結果を発表しました。
https://www.bbc.com/news/articles/cgrqxne5q9ro

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME