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294. Dr. EggsとT教授の思い出

[2023.11.24]

 時折届けられる、私の出身大学の同窓会誌を眺めていたところ、漫画「Dr. Eggs」が紹介されており、その作者である三田紀房先生のインタビュー記事を見つけました。この漫画作品は、私が卒業した、山形大学医学部をモデルにした医大が舞台で、医大生の学生生活を描くという内容です。この作品はぜひとも読んでみたいと思い、さっそく単行本1巻を購入しました。

作中では、私が学生時代通っていたキャンパスが登場し、また夏に開催される花笠まつりや、山形の秋の風物詩である芋煮会(注:山形県内陸地方の芋煮は醤油味で牛肉が入っています)も出てきます。とても懐かしく思えました。1巻では、ただ単に「成績が良いだけ」という理由で、高校の教諭に勧められ、山形の「出羽医大」(という架空の医大)に入学した主人公が、さっそく担当教官にクマの解剖をさせられる場面、先輩から「医大では孤独になると卒業が難しくなる」と言われ、「民謡同好会」というサークルに入り、サークルのメンバーと花笠まつりや芋煮会に参加するシーンを経て、医学部専門としては初めての実習に当たる、骨学の実習に取り組む場面が登場します。
 この作品では、医大生の生活が極めてリアルに描かれており、つい私は学生生活の頃を思い出してしまいました。それについていろいろ書きだすととても長くなりそうなので、今回は骨学の実習のお話にしぼります。この作品に出てくる骨学の担当の教授と同様に、我々の骨学の実習を担当された、解剖学のT教授も大変厳しい先生でした。実習の前に行われるT教授の講義は、とても早口なうえ、国際解剖学用語であるラテン語が呪文のように次々出てくるため、講義についていくのが大変でした。そして骨学の実習は、骨の標本を観察しスケッチして提出するというものでした(この作品にあった、骨を正しい位置に並べ、教授からOKをもらわないとスケッチに取り掛かれないというものは、私の実習ではなかったです)。実習中T教授に質問すると、「こんなことは自分で調べなさい!」と一蹴されてしまい、私は思わずムッとしてしまいました。また、時間をかけて一生懸命スケッチしたのにかかわらず、私の評価は周囲の学生に比べれば低い点数で、つい憤慨してしまい、T教授に抗議しようかとも考えました。しかしながら、後々考えると、T教授が安易に質問に答えなかったのは、自分で調べることが自らの勉強につながるのだ、受け身の姿勢ではダメなのだ、ということを言いたかったのではと思っております。また、私のスケッチの点数が低かったのも、正しい所見が書けていなかったからに他ならないのであり、当時憤慨してしまった自分に対しとても恥ずかしく思いました。余談ですが、T教授は、英語の分厚い参考書を強く推奨し、日本語の参考書や、英語の参考書を日本語に翻訳した書籍に対し、「これは紙くずだ!」とおっしゃっていました。当時の私は、なんてひどいことを言うんだと感じました。しかし、実際に英語の参考書を読んでみると、意外にも読みやすく、日本語の参考書よりはずっと勉強になり、つい読みふけってしまう自分がいました。T教授のご意見はごもっともと感じるようになりました。それ以降、周りの学生が日本語の参考書を買っている中、私は英語の分厚い本ばかり買うようになり、かなり変わり者の学生になってしまった感がありました。
 ・・・つい思い出話をしてしまいました。「Dr. Eggs」の2巻以降もぜひとも購読したいと思います。

 

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