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369. オンラインカジノの危険性 後篇

[2025.04.25]

【注意】オンラインカジノは違法です。警察庁は、オンラインカジノの「有料版」だけでなく、「無料版」「無料ボーナス(ポイント)」も絶対に利用しないよう呼び掛けています1)

前篇の続きです)

 

驚くべき2つの調査の結果!

 最近、オンラインカジノに関する2つの調査結果が公表されました。いずれもたいへん衝撃的な内容でした。

 1つ目は、警察庁が民間リサーチ会社に委託した調査2)です。これは、Webアンケート方式で、日本在住の約2万7000人が回答したものです(以下の図表は2)より抜粋。図表にある調査結果は、オンラインカジノ経験者500人が対象となっています)。

 まずは日本国内におけるオンラインカジノの利用者人口の推計、市場規模推計についてです。日本でのオンラインカジノの経験者は約336.9万人と推計され、年間賭額の総額は約1兆2423億円と見込まれるという結果でした。約3%の人がオンラインカジノを経験しており、1年間で1兆円以上のお金がオンラインカジノのために海外へ流れているというのは衝撃的です。


 初めてプレイした年齢について。20代が40.8%、30代が24.6%で、圧倒的に若年層が多いという結果でした。また10代以下が6.4%という数字も無視できません。実際にオンラインカジノにて10代~20代で依存症になったケースが増えているといわれます。


 オンラインカジノがきっかけで消費者金融もしくは家族・友人・知人への借金をしたことがある人の割合は、46.2%。なんと約半数です。10代では6割以上で「はい」と回答していたのには驚きます。若年層では銀行や消費者金融から借りられる額が限られるため、「ヤミ金」に手を伸ばしてしまったケースもよく聞きます。最近では「ヤミ金」の取り立てが極めて悪質になっているそうです。若い方で、ギャンブル問題でお金に困ってしまった場合は、「ヤミ金」の利用は絶対にやめて、一人で抱え込まずに医療機関や自助グループにつながってほしいと願っています。


自身のギャンブル依存度について、「そう思う」「少しそう思う」を合わせて約6割でした。否認の多いこの病気でありながら、6割とは驚くべきことです。
 なお、NHKのサイト3)やAddiction Report4)にもこの調査結果に関する記事がありますので、ご覧ください。

 2つ目の調査は、「ギャンブル依存症問題を考える会」がオンラインカジノ経験者に対してアンケートを行った調査5)で、93人が回答したものです。
 オンラインカジノを始めてから借金するまでの期間は「1週間以内」が30.1%、「1か月以内」が33.3%でした。オンラインカジノを始めるととてつもないスピードで依存になり、すぐさま借金をしてしまうことがこの調査結果からうかがえます。
 オンラインカジノが原因の犯罪行為「有り」がなんと46.2%で半数近くでした。内訳として、横領や窃盗・万引きのほか、いわゆる「闇バイト」のケースもあったとのことです。

 オンラインカジノは依存症のリスクが極めて高いだけでなく、依存に至るスピードが極めて速いこと、若年層の利用率が高いこと(それゆえ若くして依存症になったケースも多いこと)、そして犯罪にも手を染めるきっかけにもなりやすいことが2つの調査結果からも改めて確認できました。

 

まさか違法とは思わない仕掛け

 先述の「ギャンブル依存症問題を考える会」でのアンケート調査5)で、オンラインカジノを違法と知っていたかについてたずねたところ、半数以上が「知らなかった」と回答しました。実はオンラインカジノには、まさか違法とは思わない仕掛けが用意されているのです。
 数年前、とあるオンラインカジノ無料版のテレビ・ラジオCMが放送されました。それには、有名サッカー選手や元プロ野球選手などが起用されました。ビルボードで流れた某カジノの広告にも、とあるイケメンが登場しました。テレビなどのCMで放送されているから安全なものだと思ってしまうでしょう。実際にこのCMや広告を見た(聴いた)ことや、インフルエンサーがきっかけでオンラインカジノを始めたケースも多いといわれます2)5)。「無料版」はお金を賭けないので違法ではないと思うかもしれません。しかしながら、「無料版」は違法な「有料版」の入り口になってしまっています。最初は「無料版」をプレイしていた人が、それでは物足りなくなり、「お金を賭けたほうがより楽しめるのではないか」と感じ、いつしか「有料版」をやり始めてしまったケースも少なくありません2)。オンラインカジノ無料版とうたっておきながら、「今すぐ登録」をクリックすると「有料版」に誘導される悪質なサイトもあるそうです4)
 また、とあるJリーグのクラブで、オンラインカジノ無料版のメーカー「L社」(仮称)がスポンサーになってしまいました。そのクラブのユニフォームにはL社のロゴが入っています。試合会場にはその会社のロゴが表示されるそうです。L社を紹介するサイトでは、信頼性の高さから某Jリーグクラブのスポンサーになったなどを謳っています。サッカーファンのお子さんが、L社のサイトにアクセスし、オンラインカジノを始めてしまったら・・・!と大変心配になります。
 ネット上には、オンラインカジノのレビューなどのサイトがたくさんあります。その中には、「オンラインカジノは違法ではありません」「グレーゾーンです」「日本ではオンラインカジノを取り締まる法律がありません」などの誤った記事が多く存在します。この記事は日本人が書いたのか、それとも海外のオンラインカジノの関係者が日本人向けに書いたのかは定かではありません。とにかく、ユーザーがそれをうのみにして「オンラインカジノをしても捕まることはない」と判断してオンラインカジノを始めてしまったケースもあるのではと懸念します。
 そして、どのオンラインカジノのサイトも、ゲームを楽しむような感覚で気軽に始められるような工夫が施されています。その中で、オンラインカジノMがとても日本人好みのデザインと感じずにはいられませんでした。トップページには、アニメ風の女の子キャラ(いわゆる「萌えキャラ」)が登場。また、「簡単」「楽しい」などのうたい文句もあり、非常に見栄えの良いページです。これを運営する海外の人は、日本人の好みを十分把握しているようです。オンラインカジノの違法性や危険性を知らない日本人が、ついゲーム感覚で手を付けてしまうのではと感じました。

 

おわりに

 先日、NHKで「NHKスペシャル オンラインカジノ“人間操作”の正体」という番組が放送されました6)。それによると、オンラインカジノは利用者を依存症にさせるような巧妙な仕掛けがされているとのことでした。人を依存症に陥れて、金を稼ぐという手法で、極めて悪質なものと感じ、その番組を観た私はとても憤りを覚えました。

 オンラインカジノはこれだけ危険性が強いのにかかわらず、日本ではまだまだ対策は十分にされていません。違法性について報道で取り上げられたのはようやく最近のことです。海外のオンラインカジノは日本人をターゲットにしており、年次報告書には「日本は私たちにとってよい市場であり続けると信じている」と書かれているそうです6)。正直日本は舐められています。このまま放置し続けると、依存症になり未来を奪われた若者がますます増えることが大いに懸念されますし、その家族もたいへん悲惨な思いをします。今すぐ国はオンラインカジノについて対策や取り締まり強化をすべきではないでしょうか。

 

【参考文献、サイト】
1) 警察庁:オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/onlinecasino/onlinecasino.html

2) 令和6年度警察庁委託調査研究 オンラインカジノの実態把握のための調査研究の業務委託 報告書 株式会社シード・プランニング
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/onlinecasino/jittaityousahoukokusyo1.pdf

3) NHK オンラインカジノ初の実態調査 賭け金計1兆2400億円か 警察庁
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250313/k10014748481000.html

4) Addiction Report 衝撃!警察庁発表オンラインカジノの実態 10代の6割以上が借金を抱える事態に
https://addiction.report/NorikoTanaka/online-casino-npa-report

5) 公益財団法人 ギャンブル依存症問題を考える会 オンラインカジノ経験者への緊急アンケート 2025年3月7日
https://www.scga.jp/news/online_enquete/

6) NHKスペシャル「オンラインカジノ “人間操作”の正体」2025年4月20日放送

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