33. 「ゾンビランドサガ」と「生の欲望」
「ゾンビランドサガ」というアニメ作品が2018年10月から12回シリーズで放映されました。これは、ゾンビとして蘇った少女たちがプロデューサーに導かれながら、ご当地アイドルとして佐賀県を救うという内容です。
このアイドルグループのメンバーは皆、それぞれ何らかの要因で死亡し、その後ゾンビとして生き返った娘たちです。ゾンビ少女たちは(一人を除いて)自我をもっており、ゾンビ特有の悩みや葛藤、過去のトラウマを抱え、苦悩する場面も描かれています。時にはメンバー同士の衝突もあります。そんな中、メンバーたちで助け合いながら、個々の悩みやトラウマを乗り越え、少しずつ成長していきます。そして佐賀県を救うべく、地域のイベントなどに参加し、地元企業のCMに出演し、そして単独ライブを開催するまでに活動の幅を広げます。
この作品を観て、これらのゾンビ少女たちは実際にはすでに死亡していながらも、「生の欲望」が強いのではないか、と私は勝手に感じたのでした。その証拠に(?)、この作品の公式ウェブサイトには、大きく「私たち、生きたい!」と表記してあります。
「生の欲望」は、森田療法における重要なキーワードです。「生きたい!」という生存欲、また「健康でいたい!」「人に軽蔑されたくない!」「偉い人になりたい!」など、向上していきたいという欲望のことを言います。これらは人間なら誰しも自然に持っているエネルギーともいえます。
「生の欲望」の対になるキーワードは「死の恐怖」です。これは、「死んでしまったらどうしよう」「病気になったらどうしよう」「人から馬鹿にされたらどうしよう」などの不安や恐怖を指します。森田療法では「生の欲望」と「死の恐怖」は表裏一体の関係にあるとされています。例えば「健康でいたい!」という欲求が強いほど、「病気になったらどうしよう」という不安も強くなるものです。このような不安や恐怖も自然な感情です。
我々がもつ「悩み」も、「生の欲望」の裏返しと言えます。「よりよく生きたい!」という欲求が強いほど、悩みも大きくなるものです。もちろん人が悩むことも、自然な姿です。
森田療法では、自然な感情とされる不安や悩みは、排除することなくそのまま付き合いつつ、「生の欲望」というエネルギーを建設的な行動へ注ぎ込むよう指導していきます。
先述のゾンビアイドル集団が、単独ライブを開催するくらいにまで発展していったのも、個々のゾンビ少女の「生の欲望」が遺憾なく発揮されたからだと私は考察しております。また、この作品で登場する「プロデューサー」の存在も大きいと思います。彼はかなりふざけた人物のように見えますが、実際にはしっかりとゾンビのメンバーたちをサポートしています(私見です)。おそらく彼は名プロデューサーなのかもしれません。
この作品は12月でいったん放映が終了しましたが、反響が大きいこともあり、もしかすると続編が制作されるかもしれません。その暁には、ゾンビ少女たちが今後どのように成長していくのか、是非とも観てみたいと思います。
「ゾンビランドサガ」
https://zombielandsaga.com/